【社説①・12.02】:半導体戦略 次世代製品の国産化を着実に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.02】:半導体戦略 次世代製品の国産化を着実に
デジタル化が進む世界で、次世代半導体の量産化は、日本経済が成長するための重要な課題だ。政府は事業のリスクを管理しながら、民間も引き込み支援を進めてもらいたい。
政府は先月にまとめた総合経済対策で、半導体製品・AI(人工知能)の関連産業の強化策を打ち出した。2030年度までに次世代半導体の研究開発補助金などに6兆円程度、量産投資などへ4兆円以上を充てる方針だ。
多くを投じるのが、次世代半導体の国産化を目指す「ラピダス」への中長期にわたる支援策だ。
まだ製品の姿も見えない企業に対して、異例の巨額な資金規模を用意し、政府による出資も検討するという。最先端の半導体製品が、日本経済の成長に貢献する大きさを考慮したためだろう。
ラピダスは、トヨタ自動車やソニーグループなどが出資し、政府の全面支援で22年に設立された。世界でまだ実用化されていない回路の線幅が2ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の最先端品を、北海道で27年から量産する計画だ。
情報の処理能力が高い次世代半導体は、生成AIやデータセンター、自動運転車、医療・創薬など高い成長が見込める幅広い分野で欠かせない製品である。
日本は半導体製品よりも、製造装置や素材で有力企業が多い。ラピダスが最先端品の生産基盤を築けば、産業全体の競争力の強化も期待でき、意義は大きい。
ラピダスは、最先端品の開発で米IBMとすでに提携しているほか、米半導体大手エヌビディアも協力関係に関心を示している。
経済安全保障の観点からも、米国との連携を強化し、供給網を構築していくことが大切だ。
これまで政府は、補正予算が策定されるたびにラピダスへの資金支援を行い、計9000億円超の補助を決めてきた。量産開始までには5兆円規模の資金が必要だとされているが、中長期的に支えていく仕組みが弱かった。
リスクが高いと考える民間からは十分な協力を得られていない。政府が中長期的な関与の姿勢を明確にしたことで、民間資金の呼び込みも図れるのではないか。
半導体の微細化を巡る国際競争は激しい。事業には一定のリスクがある挑戦的な取り組みだ。
事業がうまくいかずに損失が生じれば、国民負担になる。重い責務を負う政府とラピダスは、リスクの丁寧なチェックが不可欠だ。事業の透明性を確保し、説明責任も果たしていかねばならない。
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