路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①・12.12】:被団協に平和賞 核廃絶の思い継ぎ、広げたい

2024-12-12 16:00:30 | 【ノーベル賞(物理学・化学・生理学・医学、文学、平和および経済学の「5分野...

【社説①・12.12:被団協に平和賞 核廃絶の思い継ぎ、広げたい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.12】:被団協に平和賞 核廃絶の思い継ぎ、広げたい

 「人類が核兵器で自滅することのないように」。同じ悲惨な苦しみを二度と、誰にも味わわせてはならないという全身全霊の訴えは、世界の多くの人々に響いたはずだ。

 被爆の実相を伝え、核兵器廃絶の運動を広げてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に、今年のノーベル平和賞が贈られた。 

 広島、長崎への米国の原爆投下から来年の80年を目前にしながら、相次ぐ紛争と対立から核兵器の脅威はいまだ世界を覆い、むしろ高まっている。

 ノルウェーの首都オスロで受賞し、演説に立った被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(92)は、核兵器使用の脅しが公然と語られる現状に「限りないくやしさと憤りを覚える」と厳しく批判した。

 ボタン一つで人間社会を破壊する核兵器の危機は差し迫っている。そのリスクを共有し、なくす確かな道筋と、責任ある行動につなげていかねばならない。

 核問題での平和賞は、「核なき世界」を掲げた2009年のオバマ米大統領、17年の非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」に続く。

 ◆被害者にも加害者にも

 フリードネス・ノーベル賞委員長は、授賞理由で「核兵器は二度と使われてはならない理由を、身をもって立証してきた」と評価した。その献身で大戦後の世界に根付いてきた「核のタブー」がいま「圧力にさらされている」とする。

 核の非人道性を体現する被爆者の訴えに改めて光を当て、歯止めを守ろうとしたといえよう。

 田中さんの演説には胸を打たれた。被爆した長崎の一面の焼土と、親族5人を含む大勢の無残な死を目の当たりにした壮絶な13歳時の体験を語った。その年の末までに広島、長崎で計20万人超が死亡、生き残った40万人余りの被爆者も病苦と生活苦、差別にあえぎ、後遺症は今も続く…。

 1発でもこれほどの惨劇をもたらしたのに、世界で現在「直ちに発射できる核弾頭が4千発もある。広島や長崎の数百倍、数千倍の被害が起きる」とし、その異常性を強調した。「いつ被害者になるか、加害者にもなるかもしれない」との問いかけは、いまを生きる人に自分ごととして切迫感を印象づけたに違いない。

 ◆高まる核使用リスク

 田中さんらが身を削って紡いできた核のタブーは大きく揺らいでいる。

 核兵器国とその同盟国が依存を深める「核抑止」は、核戦力を恐れて相手が攻撃を思いとどまるという仮定に基づく。保有国トップの理性に頼る危うさは、もはや瀬戸際を迎えているのではないか。

 ウクライナへの侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は、核使用を辞さないと威嚇を繰り返す。先月には、核兵器を使う条件を拡大・緩和する核ドクトリンの改定版に署名し、脅しの危険水準が一段引き上げられた。

 中東でもイスラエルの閣僚が核使用に言及し、ロシアとの軍事協力で北朝鮮は核・ミサイル開発を加速。中国の核戦力強化に対し、米国などは「使える核兵器」と呼ばれる小型核開発を進めている。

 こうした指導者の暴走や偶発の事態で、人類は破滅に至る。

 田中さんが訴えた「核兵器は人類と共存できない」「一発たりとも持ってはいけない」という核廃絶こそ、恐怖の悪循環から決別できる「現実論」であることを正面から受け止めるべきだ。

 ◆核禁条約への参加を

 その切なる思いから、被爆者らが国連や平和会議などで訴え広げた核廃絶世論の一つの結実が、核保有や使用、開発を初めて違法化する「核兵器禁止条約」である。21年に発効し、73カ国・地域の批准に広がっている。

 ところが、日本政府は米国の核の傘に頼る同盟体制の否定になるとして、参加に背を向け続ける。昨年の先進7カ国首脳会議(広島サミット)でも核抑止論を正当化し、内外の失望を招いた。

 石破茂首相も被団協の受賞に祝意を示す一方、「核抑止は必要」と繰り返す。ただ、きのうの国会では、西側同盟国でも条約締約国会議にオブザーバー参加しているドイツの主張や議論状況を検証するとし、含みも持たせた。

 核兵器の不拡散体制や軍縮の条約・交渉の停滞や後退が続く中、唯一の戦争被爆国として核兵器国と非保有国の「橋渡し役」を自任するなら、参加へ踏み出すことを求めたい。

 命ある限りと訴えてきた被爆者も平均年齢は85歳を超え、語り部が減少して地域団体の活動縮小や解散も相次いでいる。

 「被爆者なき時代」の足音が確実に近づく中、生身の証人たちの体験を、次の世代に引き継いでいくことも今回の平和賞の大きなテーマである。

 田中さんは、積み重ねた証言を記録、保存し、活用する運動を世界で広げ、それぞれの政府の核政策を変えさせる力になることへの期待を示した。

 決して諦めずに核廃絶のうねりを広げた被爆者たちの信念と粘り強さを、核なき世界への希望につなぎたい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月12日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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