路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す

2025-01-04 04:05:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・核兵器禁止条約

【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.01】:<戦後80年に考える>:原点を見つめる 平和と民主主義誓い直す 

 戦後80年を迎えた。
 
 焼け跡から戦争をしない国として立ち上がった日本は高度経済成長を遂げ、繁栄を築いた。
 
 そうした時代は過去のものとなりつつある。急速に人口が減少し、経済は地盤沈下した。
 
 分断が進む世界は戦火がやまない。ロシアのウクライナ侵攻は来月で3年となり、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への無差別攻撃も続く。
 自国第一のトランプ氏が今月米国大統領に返り咲く。中国との対立はさらに激化しそうだ。
 日本政府は従属的な対米関係の下で自衛隊の増強と米軍との一体化を加速させている。集団的自衛権の行使を認め、敵基地攻撃能力の保有を決めた。憲法の平和主義が揺らいでいる。
 「戦争ができる国」に逆戻りする流れを止めねばならない。自由で公正な社会を守るため、平和と民主主義を誓った戦後の原点を見つめ直す時である。

 ■被団協が与えた希望

 改めて着目すべきは戦争放棄と戦力不保持・交戦権の否認を定めた憲法9条の成立過程だ。
 連合国軍総司令部(GHQ)の案を基に政府が帝国議会に提出した憲法改正案の9条に「平和」の2文字はなかった。1項の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」との文言は社会党議員らの主張を踏まえ加えられた。
 9条に積極的意義を吹き込んだ平和主義の源流と言える。
 「押しつけ憲法論」や、戦後日本の歩みを「一国平和主義」とする批判への反証になろう。
 当時の審議で論陣を張った一人に森戸辰男がいる。経済学者だった戦前に思想弾圧を受け、戦後は社会党結成に参画した。1946年1月の論文「平和国家の建設」を古関彰一独協大名誉教授が「平和憲法の深層」(ちくま新書)で紹介している。
 「平和国家は理念的平和主義に留まることなく、実践的・方法論的平和主義に進出することによって(略)、はじめて完全な平和国家となることができる」
 平和主義を実践し現実を変える力にする。大国が身勝手に振る舞う現代に示唆を与える。
 ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の活動がまさに当てはまる。核兵器は絶対悪だと訴え続けて国際世論を喚起し、核兵器禁止条約制定を後押しした。
 授賞式に広島、長崎などの高校生平和大使4人も出席した。
 行動し、被爆者の訴えを若い世代が受け継いでいけば、いつかは現実の岩盤を崩せる。諦めてはならない、大切なのは声を上げ続けることだ―。
 平和賞にはそんな希望を抱かせた意義も見いだせよう。

 ■真摯な反省の表明を

 戦争の記憶を風化させないためには反省と総括が必要だ。
 村山富市首相が出した戦後50年の村山談話は侵略と植民地支配への「痛切な反省と心からのおわび」を表明した。安倍晋三首相の戦後70年談話も間接的な表現ながらこれを継承した。
 しかし村山談話は国民的議論の末に生まれたものではなく、安倍政権の支持勢力には歴史修正主義的な考えが根強かった。
 破局への道をなぜ歩んでしまったのか、引き返せなかったのか。国として歴史の本格的検証をせずにきた結果、戦争責任は曖昧になり、中国や韓国との間に今も歴史問題が影を落とす。
 歴史に向き合い、真摯(しんし)に反省する和解の営みを世代を超えて続ける。その姿勢を日本の首相と国会は内外に表明すべきだ。

 ■政治の信頼取り戻せ

 過去への認識を国民が共有する上で欠かせないのは政治への信頼回復である。昨年は裏金問題が国政を揺るがし、自民、公明両党は少数与党に転落した。
 政党政治の弊害として「金の誘惑」を指摘した中高生向け教科書がある。48年に文部省が刊行した「民主主義」だ。
 財閥がカネを出し、政権は金権によって左右される。戦前の日本では、しばしばそういうことが行われた―と説く。
 「昭和の時代になって、軍を中心とする独裁政治が横行するにいたった大きな原因の一つは、こうした政党政治の腐敗にあった」。現代政治への警句のような教科書を官が作っていた。民主主義の定着に懸命だった当時の熱量に驚きを禁じ得ない。
 臨時国会で改正された政治資金規正法も抜本改革には遠く、野党が求めた企業・団体献金の禁止には至らなかった。通常国会でカネのかからない透明な政治を実現しなければならない。
 
 交流サイト(SNS)を通じ真偽不明の情報が拡散し、選挙に影響を及ぼす時代になった。
 
 民意がゆがめば、熟議によって合意を形成する本来の民主政治は望めなくなる。ポピュリズム的な主張で民衆を扇動する指導者が国を誤った方向に導く。思えばヒトラーのナチス・ドイツもそんな経緯で生まれた。
 
 歴史は韻を踏むといわれる。そうならないよう日本は戦後民主主義の初心に立ち返り、その価値を世界に発信すべきだ。
 
 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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