【社説②・12.04】:金利ある世界 家計への恩恵を経済好循環に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.04】:金利ある世界 家計への恩恵を経済好循環に
日本銀行が金融政策の正常化を進めたことで、金融商品の利回りが向上し、家計への恩恵が広がっている。日本経済の好循環につなげて、活力を取り戻していくことが大切だ。
日本生命保険は、個人向けの年金保険や終身保険について、契約者に約束する利回りを来年1月から約40年ぶりに引き上げる予定だ。マイナス金利政策が3月に解除されて以降、資金運用の環境が改善しているためだという。
契約者にとっては、支払う保険料が安くなる。例えば、20歳の男性が受取額1000万円の年金保険に加入し、45年間積み立てた場合、支払額は約928万円から約885万円に下がるという。
日銀が政策金利を引き上げたことで、「金利のある世界」が本格的に到来している。賃金と投資がともに増える「成長型経済」へと転換していく過程では、金融商品の利回りの上昇も期待できる。
家計がその恩恵を享受し、投資や消費に振り向け、経済の好循環につなげていくことが重要だ。
バブル経済の崩壊後、デフレが長く続き経済は低迷した。日銀が景気を下支えするために、超低金利政策を続けてきた結果、しわ寄せを受けたのは家計である。
1990年代初めに、定期預金の金利は年6%を超えることが珍しくなかったが、2000年代以降は、ほとんど金利がつかなくなった。この30年間に家計が失った金利収入は、数百兆円に上るとも試算されている。
日本経済は新たな成長の段階へと移っていくべき局面にある。
すでに大手銀行が今春、普通預金の金利を17年ぶりに引き上げている。また、少額投資の運用益を非課税にする「NISA」の利用も増えており、運用先に対する関心は高まっていくだろう。
こうした流れに合わせて、投資のリスクに対する教育も充実させていくのが望ましい。
日本経済が成長を続けるには、民間企業の生産性向上がカギを握る。金利の上昇を受け、銀行の収益改善は顕著だ。成長への資金を供給する金融機関が果たす役割は一段と重くなっている。
三菱UFJフィナンシャル・グループなど3メガバンクは、貸し出しの利ざやが改善したことなどにより、24年9月中間決算でいずれも過去最高益を更新した。地方銀行も好決算が相次いでいる。
銀行は預金者へ利益の還元を進めると同時に、新興企業の育成や中小企業の支援などに向けて、積極的に資金を供給してほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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