【考察】:貴教団の財産・献金・収支は? 創価学会から霊友会、ワールドメイト、幸福の科学まで質問状を送った衝撃の結果
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【考察】:貴教団の財産・献金・収支は? 創価学会から霊友会、ワールドメイト、幸福の科学まで質問状を送った衝撃の結果
◆なぜベールに包まれているのか
「宗教法人法が、宗教団体に『法律上の能力を与える』ことを目的としている性質上、財産管理や業務事業の主体は、あくまで法人格を得た『宗教法人』であり、同法第25条第3項の閲覧請求・情報開示に応じるか否かは、宗教法人が判断いたします」
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筆者が「情報開示」に関する方針を尋ねたところ、創価学会広報室はこのように答えた。回答の意味するところは後述するとして、開示の判断は宗教法人がするということは、ハードルは極めて高いといってよかろう。
実際、年末のこの時期、創価学会では「財務」と呼ばれる集金システムが作動し、その額は1000億円を超えるといわれる。まさに巨大教団だが、あくまで“憶測”であり、献金総額が幾らで何に使われたかという収支が明かされることはない。
同種の質問書を出したのは、創価学会以外に世界平和統一家庭連合(旧世界基督教統一神霊教会=統一教会),日本宗教連盟(神社本庁、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、新日本宗教団体連合会などが加盟)、幸福の科学、天理教、真如苑、霊友会、ワールドメイトといった宗教法人・団体である。日本の主だった宗教法人といっていい。
目的は、統一教会問題が解決へ向けて大詰めを迎えるなか、財産・献金・収支といった現在、隠されている宗教法人の「実態」を明らかにすることで、国民に安心感を与えられると思うからだ。ベールに包まれた統一教会問題を機に、創価学会もバッシングの対象となったが、情報開示はそうした「負の連鎖」を妨げるのではないか。
これに対する各宗教法人の見解は後述するとして、現状を確認したい。
国会で審議されている被害者救済新法案は、12月10日の会期末までに成立する見通しとなった。野党の立憲民主党・日本維新の会が強く法案の修正を求めたことで、与党の自民党・公明党はその要求に応え、後退を余儀なくされた。なかでも野党がこだわったのは、寄付を勧誘する際の「配慮義務規定」について。公明党には寄付制限につながることへの反対もあったが、最終的には譲歩した。
もうひとつ問題解決のカギを握る解散命令につながる質問権については、11月21日に宗教法人審議会が質問権の行使を了承し、文化庁は統一教会に対する調査に入った。既に「組織運営」と「財産・収支」に関する質問書を送付しており、その回答を受けて解散命令請求の可否を検討する。
安倍晋三元首相殺害事件から5ヵ月を経て、政府は殺害犯「山上徹也」という“異形”を生んだ宗教法人の排除を、「救済新法」と「質問権」を武器に着々と進めている。
ただ、マインドコントロール下に追い込んでの強制的献金、そこから生じる貧困や信仰の強要などの二世問題は、統一教会だけのものではない。
ネットや雑誌メディアなどで創価学会に問題が波及しているのは、公明党という与党の支持母体という社会性に加え、信者数、献金額などが統一教会の数十倍に達するという規模を背景にした影響力ゆえである。
また、創価学会に限らず、国家や信者以外の国民が宗教法人に持つ怖さは、「信教の自由」に守られて宗教法人の財産、収支などがベールに包まれているからだ。政府も自治体も企業も医療、学校、福祉、NPOなどの法人も、法令などによって情報公開が、半ば義務づけられており、今はネットによってどの法人も概略が把握できる。
唯一、宗教法人は宗教法人法第25条第2項によって、規則、役員、財産目録、収支計算書、貸借対照表などの作成が義務付けられ、文化庁(もしくは都道府県)と教団事務所に常備し、「閲覧請求」があれば開示しなければならないのに、役所も宗教法人も開示しない。
このブラックボックス化が宗教法人の抱える「闇」につながる。幾ら集めて何に使おうとしているのか。信者数や財産も含めて、それがわかれば不安は減じられる。
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◆宗教法人法の「閲覧請求」項目
そこで筆者は「情報開示」に関する質問書を作成、各宗教法人に送付したのだが、「開示」の前提となる宗教法人法第25条の第2項と第3項を記しておきたい。
・第25条第2項 宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
一 規則及び認証書
二 役員名簿
三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
四 境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)などに関する書類
五 議事に関する書類及び事務処理簿
六 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類。
・第25条第3項 宗教法人は、信者その他の利害関係人であって前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものではないと認められる者から請求があったときは、これを閲覧させなければならない。
「情報開示」の定めといってよかろう。この条文は、オウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こした1995年に改正され、施行された。財産や収支を帳簿として作成させ、開示義務を定めたのは、宗教法人を開かれた存在にすることで、オウム真理教のような“暴走”を防ぐ意味合いがあった。
だが、この条文は“死文化”している。宗教法人は「信教の自由」に守られおり、役所は開示したことがないし、宗教法人サイドは冒頭の創価学会コメントにあるように、主体は宗教法人であり、判断は宗教法人が行うとしている。従って、開示されることはなく統一教会の開示には、国会での複雑な手続きを経て、「質問権」が行使されなければならなかった。
そこで筆者は、各教団に以下の3点を質した。
(1) 宗教法人法には閲覧請求があり、それが「正当な利益」に基づくもので「不当な目的」でなければ「閲覧させねばならない」となっている。貴教団ではどう対処しているか。開示しないのが基本ならば、それはなぜか。
(2) 宗教法人法第25条第2項に定められた情報が開示されれば、貴教団の姿がオープンになり、国民の「親しみやすさ」や「安心感」につながるのではないか。
(3) 「情報開示」は、学校法人、社会福祉法人、NPO法人などでも進められている。貴教団の基本方針を教えて頂きたい。
創価学会が高いハードル設定をしたのは前述の通り。開示請求に関しては「個別の事案毎に、本来の法の主旨に則り適正に判断してまいります」(広報室)という。
幸福の科学は、幸福実現党という政党の支持母体となっているという意味で、創価学会との類似性がある。長文の回答をもらったが、(1)の質問への回答が「法人見解」を代表すると思われるので掲載したい。
「そもそも今回の問題は、安倍元首相銃撃事件という一個人(働かず、不幸であることを責任転嫁している人物)が起こした犯罪を、宗教全体への法規制へとすり替えているところに問題があると考えます。
これは、憲法が保障する『信教の自由』への侵害であり、こうした動きを作り出しているマスコミの邪見(宗教を悪なるものだと決めつけている偏見)に問題があります。また、これを好機として、政府(財務省)は宗教法人への課税強化を目論んでいると思われるので、情報公開には、悪質な利用がされない保障が必要だと考えます」(広報局)
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◆天理教は献金額を公開
ワールドメイトからは、法務局長名でA4版4枚の丁寧な回答をもらった。まず前提として「当法人はこれまでも、信者に自主的に決算情報を郵送するなどの、情報公開をこころがけているためか、閲覧請求を求められたことはありません」としたうえで、開示姿勢については次のような見解だった。
「宗教活動は、個々人にとってセンシティブな事項であり、だからこそ、情報の取扱に慎重が期されているものと存じます。そしてこれは、『信教の自由』『宗教活動の自由』と『知る権利』という、重要かつ異なる保護法益について、どうバランスを取るべきかの判断になります」
霊友会の回答は以下の通り。
1,(1)については閲覧請求があった場合は、宗教法人法および弊会の規定に基づき応じます。
2,(2)については情報が開示されるだけで、国民の「親しみやすさ」や「安心感」につながるとは考えにくいのではないでしょうか。書類や帳簿を開示することも大切かも知れませんが、それにもまして必要なことは、信仰に基づいて生活している人の姿や喜びの声が露出することではないかと考えています。
真如苑の回答はシンプルだ。
「ご質問(1)(2)(3)につきまして、宗教法人法第25条第2項各号、第3項に基づき、本苑では『信者その他の利害関係人が閲覧を請求する場合の手続き』についての規定がございます。これからも法令に則り、真摯に取り組んで参ります」(広報企画課)
日本宗教連盟も三つの質問に対してまとめて答えた。
「宗教法人は『公益法人』として、自主的な法令遵守、適正な管理運営、説明責任、情報開示により、適正な管理運営を行っております。本連盟は加盟法人にそれを周知しています」(事務局)
統一教会は、締切日までに回答がなかった。
また、天理教は「今回の質問への回答はお断りさせていただきます」(総務部渉外広報課)ということだったが、広報担当者は「情報開示は既に行っている」といい、それは「会報の『みちのとも』に掲載されています」ということだった。
筆者は、『みちのとも』5月号に毎年本部員会議で決議されたデータが、「教庁一般会計歳入歳出予算」として掲載されているのを国会図書館で確認できた。「御供金」として献金額が記され、雑収入などを含む歳入と、何に幾ら使ったかのかの歳出が把握できる。
それは教団の勢いを示すものでもあり、最高の歳入は1985年の約540億円。バブルという時代背景に教祖100年祭が重なった。以降、歳入は下降線を続け、10年ごとに約50億円減少している。直近の『みちのとも』(22年5月号)に記された歳入総額は約75億円だった。
天理教の情報公開は1960年から始まっていた。今回、取材には応じてもらえなかったが、どの教団もトップシークレットにしている御供金(献金)がオープンにされ、それを誰もが確認でき、これまで問題が発生していないのは、シークレットにする必然性はないということではあるまいか。
総じていえるのは、開示判断が宗教法人サイドに委ねられていることを奇貨として、宗教法人が情報開示に消極的なことだ。その正当性を担保するのは「信教の自由」だが、開かれた教団になること、国民への見える化が進むことと「信教の自由」の間に齟齬はない。
救済新法で「配慮義務規定」を巡る与野党のせめぎ合いが続いているが、27年前に論議を尽した情報開示が死文化している現状を考えれば、「信教の自由」の前に新法もはね返されてしまう恐れがある。
無税措置という恩恵を被っている宗教法人は、自ら情報開示に務め、開かれた教団となることで初めて、国民の「共感」を得ることができる。そうでなければ、宗教が生んだ「異形」が登場し世を震撼させるたびに、同じような宗教バッシングが繰り返されるに違いない。
元稿:現代ビジネス 主要ニュース メディアと教養 【担当:伊藤 博敏(ジャーナリスト)】 2022年12月08日 06:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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