現行の健康保険証の新規発行が2日から停止され、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」への本格的な移行が始まった。
マイナカードの保有者は10月末時点で全人口の75・7%に達している。このうち8割を超える人がマイナ保険証としても登録済みだ。
横浜市内の病院に設置された、マイナ保険証のカードリーダー
だが、利用率は15・67%にとどまっている。紛失の心配や個人情報がまとまって管理される不安などにくわえ、別人の情報がひも付けられたりした過去のトラブルが不信感につながっていることは否めない。
トラブルの一因になったのは、令和4年10月にデジタル相だった河野太郎氏が現行保険証を6年秋に廃止すると唐突に表明したことがある。マイナ保険証申請が急増し、ミスの多発につながった。
国民の間には、政府が普及を急ぐあまり対策がおろそかになったという不信感が根強くある。政府は不安払拭に全力を挙げ、混乱回避に努めなければならない。
そのために必要になるのは、丁寧な情報提供だ。まずはマイナ保険証を持たない人に対して、これまで通り保険診療を受けられることを周知する必要がある。現行の健康保険証も有効期限内であれば、来年12月1日まで使用が可能だ。
マイナ保険証がない人には、今の保険証の有効期限内に代わりとなる「資格確認書」が届く。申請は不要だ。有効期限は最長5年で、更新もできる。
国民にマイナ保険証のメリットを実感してもらうことも欠かせない。マイナ保険証によって医師らは、患者の同意があれば薬の処方歴や診療情報などを共有することができ、より質の高い医療の提供が期待できる。医療費控除を受けるための確定申告手続きも簡潔になる。
こうしたメリットを最大限に生かすには、医療機関や薬局側のインフラ整備も必要になる。医療機関の間で患者のアレルギーなどの詳しい医療情報の共有は来年以降に順次始まる予定という。医療機関側のインフラ整備を急ぎたい。
質の高い医療を安全に提供するために、デジタル化は欠かせない。だが、国民の信頼あってこそのデジタル化である。マイナ保険証の移行に当たり、そのことを忘れてはならない。
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