路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【正論】:国民が求める自衛隊の憲法明記 防衛大学校教授・神谷万丈

2023-05-09 08:01:50 | 【憲法問題「護憲・改憲・違憲論争・緊急事態条項・九条の改正、自主憲法制定論議他】

【正論】:国民が求める自衛隊の憲法明記 防衛大学校教授・神谷万丈

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【正論】:国民が求める自衛隊の憲法明記 防衛大学校教授・神谷万丈

 ◆世論調査が示すこと

 憲法9条を改正して自衛隊の存在を明記することには、日本国民の支持が定着している。最近の各種世論調査が浮き彫りにしているのは、この重要な事実だ。毎日新聞がこの4月に行った調査では、明記への賛成が55%で反対の31%を大幅に上回った。読売新聞による3月から4月にかけての調査でも、自民党の憲法に「自衛隊の根拠規定を追加する案」への賛成が54%に対し、反対は38%にとどまった。少し遡(さかのぼ)って昨年7月の朝日新聞の調査でも、明記に賛成が51%、反対が33%でこれらとほぼ同じ結果だった。

 このように、憲法に自衛隊の存在を書き込むことについては、調査の実施者が異なっても一貫して賛成が過半数を占めている。

 もう一つの重要な事実は、この賛成の多さがロシアのウクライナ侵略に対する国民の一時的な反応ではないということだ。侵略勃発の1年近く前の2021年4月の毎日新聞の調査で、9条を改正して自衛隊の存在を明記することへの賛成は既に51%で反対の30%を大きく上回っており、同年3月から4月にかけての読売新聞の調査も、憲法9条に自衛隊の根拠規定を追加する自民党の案への賛成が55%、反対は38%と、今春の調査とほぼ同じ数字を示していた。

 さらに遡れば、産経新聞とFNNが2017年6月に実施した調査において当時、安倍晋三首相が唱え始めたばかりの憲法9条の条文を維持しつつ自衛隊の存在を明記する案に62%が賛同している。

 9条の文言のいかなる変更にも反対する論者からは、9条改正について国民の賛否は拮抗(きっこう)しているので改正を急ぐべきではないとの主張が聞かれる。昨年5月の衆議院憲法審査会でも立憲民主党の委員がそのように述べた。9条改正をめぐる議論が「国民不在」で進んでいるのではないかという批判もしばしば耳にする。今年4月の同審査会では別の立憲民主党の委員がそう発言している。

 ◆明記不要論こそ国民不在

 だが先に挙げた一連の世論調査結果は、少なくとも憲法に自衛隊を明記する案についてはこうした認識が妥当ではないことを示している。自衛隊を憲法にはっきりと位置付けることにより自衛隊違憲論が自衛官の士気を損なうことがないようにするという安倍元首相以来の考え方には、国民の多数がこれまで何年もの間、一貫して共鳴してきているのだ。

 憲法9条をめぐっては日本が「戦力」を保持しないとする2項をどうするかなどさまざまな機微な論点が存在するため、漠然と改正の是非を問う質問に対しては賛否が拮抗しやすい。だが自衛隊明記という提案に限っていえば、国民は議論の当事者として賛意を明確にしているのであり、この状況を「国民不在」と呼ぶのはためにする議論というべきだろう。

 なお最近、立憲民主党などは、「現状で自衛隊は合憲であり、その役割と必要性については国民に十分に理解されている」から「自衛隊明記は必要ない」と主張するようになっているが、果たして説得力があるだろうか。国民は、理由もなく自衛隊明記に賛同しているのではない。戦後の日本には自衛隊を違憲と主張する政治家が少なくなく、その状況は比較的近い過去まで解消されていなかった。

 実は今に至ってもそうした考え方から脱却しきれていない政治家が一部野党には残っている。しかも憲法学者の間では、現在の憲法の規定の下では自衛隊は違憲だ、あるいは違憲と解する余地があるとの見解が主流となっている。

 ◆平和のための軍事力の役割

 国民の多数が憲法の自衛隊明記に前向きなのは、こうした現状を放置していては、将来何らかのきっかけで自衛隊違憲論が再燃し、自衛官が日本とそこに暮らす人々を守るという使命に立ち向かう上で、不都合を生じさせかねないことを恐れているからではないのか。また自衛官へのリスペクトに欠けるとも感じているからではないのか。

 最後に、憲法に自衛隊の存在を明記すると自衛隊の活動への歯止めが失われるので危険だという議論もしばしば聞かれるが、平和と軍事力の関係の誤った理解に基づく不適切な主張という他はない。

 本欄で繰り返し説いてきたことだが、平和と軍事を百八十度対極にある相容(い)れない概念としてとらえるのは間違っている。軍事力は確かに危険な一面を持つ。ものを破壊し、人を殺傷する機能が正しくない目的のために用いられれば、平和を破壊する道具となる。

 だが、その危険な道具を正しく使いこなさなければ平和を創り出すことも守ることもできないのが、人間社会の現実だということから目を背けてはならない。

 「平和のための軍事力の役割」を正しく認識し、日本でその役割を担う存在である自衛隊に憲法上ふさわしい処遇を与えることが必要だ。岸田文雄首相は憲法記念日の産経新聞のインタビューで、役割を増す自衛隊を「憲法にしっかり位置付ける」決意を語った。

 首相の有言実行を切に期待したい。(かみや またけ)

神谷万丈・防衛大教授(古厩正樹撮影)

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【正論】  2023年05月09日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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