路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【兵庫県知事選】:民意が急旋回 地元困惑 一体何が… 出身記者が現地ルポ

2024-12-02 04:03:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【兵庫県知事選】:民意が急旋回 地元困惑 一体何が… 出身記者が現地ルポ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県知事選】:民意が急旋回 地元困惑 一体何が… 出身記者が現地ルポ

 あの選挙は何だったのか。先月17日の兵庫県知事選で斎藤元彦氏(47)が再選を果たした衝撃が今も消えない。投開票から約2週間が過ぎても各メディアの分析報道が続く。わずか2カ月前までパワハラ疑惑で世論の批判を一身に浴びていた身から一転、既得権と戦う「ヒーロー」として多くの有権者から支持を得た斎藤氏。何が民意を「急旋回」させたのか。答えを探して、兵庫県出身の記者が故郷を歩いた。
兵庫県知事選の選挙戦最終日、スマートフォンを掲げる大勢の有権者の前で街頭演説する斎藤元彦氏=16日、神戸市

兵庫県知事選の選挙戦最終日、スマートフォンを掲げる大勢の有権者の前で街頭演説する斎藤元彦氏=16日、神戸市

 ■斎藤氏失職「県民の総意だと…」

 「ものすごい人、人、人。首相でも有名人でも、あそこまでにならへん。ドアも開けられんかった」。神戸市中心部のJR三ノ宮駅前にある老舗写真館社長の大平哲男さん(67)はあの日をそう振り返った。
 投開票日前日の11月16日夜、三ノ宮駅前近くのアーケード街にかかる歩道橋は、斎藤氏の「最後のお願い」を聞こうと集まった3千人を超える聴衆でごった返した。歩道橋は揺れ、あちらこちらで「危ない」「橋が落ちそうや」と悲鳴が上がったという。
 知事失職から間もない10月初旬、大平さんは同駅前に1人で立つ斎藤氏を見かけたが、足を止める人はほぼいなかったという。「それが、あんなことになるやなんて」
 斎藤氏に吹く風は、わずか2カ月間で大きく変わった。
 兵庫県庁内のパワハラ疑惑は今年3月、元西播磨県民局長=7月に死亡=が報道機関に告発文書を送ったことで発覚した。
 「うそ八百」と疑惑を全否定する斎藤氏に対し、県議会は真相究明に向けて百条委員会を設置し、新聞各紙やテレビも連日問題を報じた。
 「百条委の追及が手ぬるい」「早く知事をやめさせろ」。県議会や県庁には苦情や知事の辞職を求める声が殺到した。交流サイト(SNS)にも斎藤氏の批判があふれた。
 県議会は9月19日に全会一致で不信任決議を可決する。「百条委の調査が終了していない段階での不信任は見切り発車だ」(県議会関係者)との声もあったが、急速に広がる「斎藤バッシング」の空気は県議らを突き動かした。
 だが、そのわずか2カ月後の出直し知事選で、斉藤氏は対立候補に約13万票の差をつけて大勝。選挙後、自身のSNS戦略に関わったPR会社を巡る公選法違反疑惑が浮上したが、強気の姿勢で反論している。
 「2カ月前は県庁に知事への苦情が殺到し、職員が悲鳴を上げていた。知事の辞職は県民の総意だと思っていた」と語った自民党のベテラン県議は、民意の振れ幅の大きさをこう嘆いた。
 「まるでジェットコースターに乗っているように景色が急に変わった」

 ■SNSが「ヒーロー」像拡散 閉塞感のはけ口にも

 「パワハラ権力者」から既得権と戦う「ヒーロー」へ。11月17日の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事(47)に対する評価は、短期間のうちにめまぐるしく変化した。極端にも見える民意の変化が生まれた理由は何だったのか。そのヒントは、記者が兵庫で知り合った若者の体験にあるような気がした。
選挙戦最終日に有権者と握手する斎藤元彦氏。SNSを通して熱狂が広まり、街頭演説場所に多くの人が訪れた=11月16日午後、兵庫県尼崎市

選挙戦最終日に有権者と握手する斎藤元彦氏。SNSを通して熱狂が広まり、街頭演説場所に多くの人が訪れた=11月16日午後、兵庫県尼崎市

 兵庫県加古川市の大学生、田中翔一郎さん(20)=仮名=とは知人の紹介で出会った。田中さんにとって今回の県知事選は「初めての投票だった」。これまで政治には無関心で、10月下旬の衆院選では投票に行こうとも思わなかった。

 ■1人の闘い応援

 そんな若者の意識を変えたのは交流サイト(SNS)だった。偶然目にした「斎藤さんははめられた」という陰謀論と、その「真実」を伝えないメディアや県議会への批判。X(旧ツイッター)には「斎藤氏は利権に立ち向かうヒーロー」との情報があふれていた。
 心に突き刺さったのは、斎藤氏が1人で街頭に立つ動画だった。「斎藤さんは間違ったことをしていない。応援しないといけない」。そんな衝動に駆られた。
 SNSには斎藤氏への批判もあったが、同じ意見や価値観の人ばかりとつながる「エコーチェンバー」などネット特有の現象によって、田中さんには偏った情報だけが届いていた可能性がある。
 斎藤氏が「たった1人」で県議会やメディアなどに対峙(たいじ)する構図は日ごとに共感を広げた。斎藤氏本人の発信を第三者がSNSで拡散。決定的だったのは、斎藤氏を「援護射撃」するため立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)の存在だった。
 SNS調査会社「ネットコミュニケーション研究所」によると、立花氏は選挙期間中に自身のユーチューブチャンネルに100本以上の動画を投稿し、再生数は計1500万回に上った。
 立花氏は斎藤氏の失職を「県職員や県議会のクーデター」と主張。神戸新聞本社前で演説し「メディアが情報をねじ曲げている」と批判した。
 そんな立花氏の主張をSNSで拡散していた神戸市の30代の自営業男性にも話を聞けた。「立花さんはテレビや新聞が隠す真実を発信した」。男性は記者に断言した。
 神戸新聞は11月23日朝刊のコラムで「地道な取材で得た情報のうち、事実が確認でき、読者や県民に届けるべきと判断したニュースを、自信を持って紙面やネットで配信している」と説明した。
 共同通信が投開票日に行った出口調査では、10~30代の65%前後が斎藤氏を支持し、無党派層の52%が投票した。
 県庁や県議会、既存のメディアまでもが「敵視」されたように映る兵庫県知事選。立教大の砂川浩慶教授(メディア社会学)は「社会に漂う閉塞(へいそく)感や格差が問題の根っこにある。SNSが不満のはけ口になっている」と分析する。
 今回の知事選が兵庫に残したもの。神戸市内を歩くと、会社員や商店主、主婦から何度となく「後味が悪い」という言葉を聞いた。
 県議会百条委員会の委員を務める県議の1人は「元県民局長を自死に追い込んだ」と事実無根の情報をネット上で流され、脅迫電話も受けた。「家族も心底恐怖を感じた。公平公正が求められる選挙であんなことが許されるのか」と憤る。

 ■スタッフに暴力

 一方、斎藤氏の街頭演説中、男性スタッフが演説を妨害しようとした人に突き飛ばされ、ケガを負った。このスタッフは「暴力で解決できるはずはないのに」と記者に憤りを語った。SNSで増幅した怨嗟(えんさ)は、社会の分断を深めていた。
 県政の混乱は今も続く。斎藤氏のSNS戦略に携わったPR会社を巡る公選法違反疑惑が浮上し、陣営関係者に約束していた取材を断られた。SNS上には「まだ『斎藤たたき』をするのか」など虚実入り交じった言説が今も飛び交う。
 SNSが今後も選挙に影響を与え続けるのは間違いない。兵庫のような極端な民意の変化は北海道でも起こり得る。その時、報道機関は何をどう伝えていくべきなのか。それは今回の選挙が私たちに突き付けた課題でもある。( 竹中達哉 )
 
 元稿:北海道新聞社 主要ニュース 政治 【選挙・兵庫県知事選】  2024年12月01日  21:32:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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