【兵庫県知事選】:問題単純化、ネット情報を過大視 東大・牧原教授に聞く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県知事選】:問題単純化、ネット情報を過大視 東大・牧原教授に聞く
斎藤元彦知事が再選された兵庫県知事選で起きた現象は、今後の選挙にどのような影響を与えるのか。東大先端科学技術研究センターの牧原出教授(57)=政治学=に聞いた。
―結果をどう見ますか。
「パワハラの疑いなどで百条委員会(県議会の調査特別委員会)が立ち上がったことからも、斎藤氏が県職員や議会とコミュニケーションが全く取れていないことが分かります。客観的に見てリーダーシップが欠けている人を県民が再び選んだのは、驚きました」
―何がこの結果をもたらしたのでしょうか。
「既存メディアは確実性がないことに踏み込まないことが多く、問題を単純化、矮小(わいしょう)化した交流サイト(SNS)などインターネットの情報を過大視した有権者が相当数いたとみています。ただ、その中には県外の住民による書き込みが多くありました」
―地方選挙でそのような現象が起きた意味をどう考えますか。
「特定の候補への支持と他候補への悪質な攻撃が(選挙が行われている)自治体の外から入ってくる状態は、地方自治の観点から健全ではありません。もっと危機感を持たなければいけないと思います。どこの自治体でも住民の数は日本国民の数より圧倒的に少ない。圧倒的多数の自治体外から、公正とは言えない主張が散らされた中で選挙が行われたことで、地元の問題、自治の問題を静かにじっくり考える機会が奪われかねません」
―政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が出馬し、斎藤氏を応援する運動を展開しました。
「立花氏のように手段を選ばない人たちがこれからも出てくる可能性もあります。(代表らが選挙活動妨害事件で公選法違反の罪に問われた政治団体の)つばさの党も(対立候補の選挙運動を妨害するなどの)動画で稼ごうとしていました。選挙自体がネットビジネスの対象となってきています」
―既存メディアへの不信感も指摘されています。有権者やメディアはどのようなことを意識すべきでしょうか。
「ネットの情報をしっかり吟味する必要があります。地方選挙で外から多くのゆがんだ声が入りやすい状況の中で、地方のメディアの役割が重要です。首長や議会の対応を手厚く報道し、実態を知ってもらう必要があります。米国のように、地方のメディアが減ってポピュリズム(大衆迎合主義)の傾向が強まることはあってはなりません」
<略歴>まきはら・いづる 1967年愛知県生まれ。東大法学部卒。東北大大学院教授などを経て2013年から現職。著書に「崩れる政治を立て直す」など。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 政治 【選挙・兵庫県知事選】 2024年12月01日 21:32:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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