【社説①・02.08】:知事選強制捜査/疑惑の徹底解明を目指せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.08】:知事選強制捜査/疑惑の徹底解明を目指せ
昨年11月の兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事側がPR会社に金銭を支払ったのは買収、被買収に当たるとして斎藤氏と女性経営者が刑事告発された問題で、兵庫県警と神戸地検は公選法違反容疑でPR会社の関係先複数を家宅捜索した。知事側への捜索はしていない。
近年の選挙は交流サイト(SNS)の影響力が強まり、知事選の結果も左右したと指摘される。2013年に解禁されたインターネット上の選挙運動が、買収によってゆがめられたとすれば民主主義の根幹に関わる。県警と地検は捜査を尽くし真相を解明してもらいたい。
告発は神戸学院大教授と検事出身の弁護士が昨年12月に行った。公選法は有権者や運動員に対する金銭や物品などの供与を禁じている。
今後の捜査の焦点は、PR会社が担った役割だ。告発状は女性経営者の投稿記事などを基に「斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、インターネットによる選挙運動を含む広報の企画・立案を実行する選挙運動者だった」とし、斎藤氏側が支払った71万5千円は選挙運動への報酬だったと主張する。
これに対し、斎藤氏側は「広報戦略を依頼した事実はなく、女性経営者はボランティアに過ぎない」とし、支払いは「公選法で認められたポスター制作費などに対してだった」と真っ向から否定している。
捜査関係者によると、これまで女性経営者から任意で事情を聴いてきたが、資料提供に十分に応じず強制捜査が必要との判断に至った。斎藤氏の代理人弁護士は、求めに応じ選挙ポスターのデータや請求書を既に任意提出したと説明した。捜査当局は、押収資料などを基に支払いが選挙運動への対価かどうかなどを慎重に見極める必要がある。
斎藤氏は強制捜査について「公選法に違反することはしていないと認識している」とのこれまでの主張を繰り返した。しかし、疑念を抱かれたままでは県政の混乱は避けられない。対応を弁護士任せにするのではなく自らが積極的に説明責任を果たし、県民の納得を得られるよう努めるべきだ。
知事選を巡っては、斎藤氏とともに立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首がSNSなどを通じ斎藤氏を応援した「2馬力選挙」も公平性の点から問題視されている。石破茂首相は「どう考えてもおかしい」と述べ、法改正などの対応を急ぐ考えを示した。
今回の捜査結果も踏まえ、国や自治体は知事選を巡る全ての疑問点を詳細に検証し、インターネット時代にふさわしい選挙制度の見直しを図らなければならない。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月08日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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