【社説①・03.08】:【国際女性デー2025】:働く環境 活躍阻む健康問題に目を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.08】:【国際女性デー2025】:働く環境 活躍阻む健康問題に目を
国連が3月8日を「国際女性デー」と定めて50年。日本はことし女性差別撤廃条約批准と男女雇用機会均等法制定から40年を迎え、法や制度は一定に整いつつある。しかし、政治や労働の分野で指導的な立場にいるのは今も大半が男性だ。男女の賃金格差も縮まらない。働く女性が増えているのに、家事や育児・介護の負担は女性に重くのしかかっている。
職場での男女の格差をなくす一手となるだろうか。政府は働く女性の健康支援に乗り出す。今国会に女性活躍推進法改正案を提出する。頭痛や気分の落ち込みなど更年期や月経に伴う体調不良の女性従業員を支援するよう企業に求める内容である。
政府が「女性活躍」の旗を振る一方、女性の健康問題は職場ではタブー視されがちだった。働く女性が抱え込んでいた問題を国が可視化し、支援する意義は大きい。
推進法は安倍晋三政権が成長戦略の一つとして「女性活躍」を掲げ、就労分野での男女格差を解消するため施行された。働く女性や女性管理職を増やすため、仕事と育児の両立支援などを重視してきた。だが、一足飛びには進まない。ほかにも課題があるからだ。健康問題はその一つといえよう。
個人差はあるものの、女性にとって月経や更年期の頭痛や腹痛、不眠などのつらさは深刻である。とりわけ働く女性は業務に差し支えることもある。厚生労働省による2023年の調査では、更年期症状や更年期障害の人の76・1%が仕事に支障があると答えた。月経に伴う症状では、83・7%が同様の回答をした。これらが原因で、責任あるポストを諦めたり退職したりとキャリア形成にも響いているという。
政府は、女性の健康問題による仕事の効率低下や離職などの経済損失が年間3兆4千億円に上ると試算している。対策は急務である。
改正案は、働く女性の健康上の課題に配慮するよう初めて明記。休暇制度の拡充や相談窓口の整備など、企業による支援を促す。男女の賃金格差と女性管理職比率の公表を従業員101人以上の企業に義務付けることも盛り込む。
問われるのは支援の中身だ。厚労省によると、法定の「生理休暇」も「男性上司に言いにくい」などの理由で取得が低迷している。意思決定の場に女性が少ない社会構造の問題にも目を凝らさねばならない。政府は休みやすくするため名称変更を含めた改善策を検討するというが、それだけでは解決にはなるまい。
更年期などの健康問題は男性も直面し得る。女性だけの問題として、見過ごしてはならない。誰もが働きやすい環境を整えるのは格差をなくす一歩である。それには私たちの意識改革も欠かせない。
職場や家庭に今も、性別で役割を分担するような固定観念がはびこっていないだろうか。国連が女性の地位向上と差別解消に向け、連帯を呼びかけている「国際女性デー」のきょう、改めて自問する必要がある。
元稿:中國新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月08日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます