《社説②》:政府の追加物価対策 対症療法では不安拭えぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:政府の追加物価対策 対症療法では不安拭えぬ
その場しのぎに過ぎない施策をいつまで繰り返すのだろうか。
政府は2兆円超の追加物価対策を決めた。低所得世帯への給付金として、昨年の5万円に続き、3万円を支給することなどが柱だ。
今春以降も食料品を中心とした値上げラッシュが続く。所得が低い人ほど負担は重く、的を絞った支援は重要である。
だが内容には問題が多い。
まず支援を必要としている人に給付金が届かない恐れがある。
対象となる住民税非課税世帯は高齢者が6割以上を占め、所得が少なくても、預金などの資産を持つ人がいる。一方、対象外でも、低賃金の非正規労働者など生活に苦しんでいるケースは多い。
自治体が地域の実情に応じて使える交付金も増やしたが、使途はあいまいだ。政府は消費下支えに向けた商品券発行やポイント付与も推奨している。困窮者支援と無関係のばらまきになりかねない。
見過ごせないのは、国会審議を経ずに政府の判断で使える予備費で全額を賄うことだ。
予備費は本来、自然災害など不測の事態に備えた例外措置だ。だが政府は新型コロナウイルス禍を理由に巨額の計上を常態化させた。政府の「便利な財布」と化せば財政民主主義を骨抜きにする。
昨年春も給付金などに1兆円超をつぎ込んだ。参院選を控えた時期だ。今回は統一地方選や衆参両院の補選と重なる。政府が対策の検討に入った直後、自民党幹部は積極的な活用を促した。選挙目当てとみられても仕方がない。
予備費が計上されている予算は財源の多くを国債に頼る。膨大な借金を抱える中、将来へのつけを一段と増やす。極めて無責任だ。
問題の根底には、岸田文雄首相が経済格差の是正にほとんど手を付けていないことがある。
就任当初は、コロナ禍に伴う生活困窮者の増加を受けて「分配重視」を唱えていた。だが富裕層に有利な資産所得の倍増策を打ち出すなど、成長優先のアベノミクス路線に回帰してしまった。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年03月29日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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