【天風録・01.06】:仕事始め
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・01.06】:仕事始め
身も心も少し重い。のそのそと今朝、布団を出た勤め人は多いのではないか。暦に従えばきのうまで9連休。5年ぶりの長さだった。寝正月でなまったわが心身も、仕事始めにあらがっている
▲物価高の折、豪勢に正月気分を味わえた人は一握りだろう。昨年末の調査会社のアンケートでは、おせちなどの食費を削る予定の人が5割超。3割がお年玉を減らすと答えた。初詣のさい銭はどうだったか。古い習わしが懐事情で細るのはさみしい
▲働く人の「手取り」が伸び悩む。増えた給料は物価高にかき消され、税の重さが身にしみる。〈はたらけど/はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢっと手を見る〉。石川啄木の歌にちなみ、「ぢっと手を見る」という嘆きがSNSをにぎわす
▲下を見てばかりもいられない。昔の歌舞伎役者は仕事始めを1月6日に定めていたと聞く。元日から指を折って数えた時、6日目で初めて小指が立つ。「一本立ち」につながる縁起を担いだ。まっすぐな願いが伝わる
▲働く意味を見つめ直す。それも長い休みの効用だろう。世知辛いご時世でも、自らの成長や誰かの笑顔を思い描けば力も湧く。新年、身も心も奮い立たせて良いお仕事を。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2025年01月06日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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