【主張】:GDP年6%増 外需頼みに危うさはらむ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:GDP年6%増 外需頼みに危うさはらむ
4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で6・0%増となり、3四 半期連続のプラス成長となった。数字の上では大幅な伸びである。だが、これを楽観するわけにはいかない。
GDPの過半を占める個人消費など、内需が総じて弱いためだ。賃上げが物価高に追いつかず、新型コロナウイルス禍から経済が回復する流れに水を差している。
GDPを押し上げたのは、あくまでも輸出などの外需だ。ただし、中国経済の減速や金融引き締めが続く米欧経済、ウクライナ戦争など、海外情勢は不確実性が高い。そこに依存した景気回復は危うさもはらむ。
大事なことは内需をいかに底上げするかだ。上場企業の4~6月期決算の最終利益が増加していることは好材料だ。収益拡大を継続的な賃上げや積極的な投資につなげ、経済の好循環を確実にしなくてはならない。
4~6月期は、自動車などの輸出が大幅に伸びた。輸出にカウントされるインバウンド(訪日客)需要も拡大し、今月には中国から日本への団体旅行も解禁された。訪日消費をどう取り込むかは引き続き重要だ。
一方で個人消費は前期比0・5%減とマイナスに転じた。コロナ禍からの回復過程で対面サービスは増えたが、食料品や家電などの買い控えが響いた。企業の設備投資も横ばいだ。
足元では7月の消費者物価上昇率が3・1%となるなど、物価の高止まりが続いている。ガソリン価格も再び高騰し、個人消費の本格回復を遠のかせかねない。人手不足が深刻化していることも懸念材料である。
こうした経済環境に対応できるよう、デジタル技術などを有効に活用して1人当たりの労働生産性を高め、賃上げにつなげなくてはならない。特に中小・零細企業が取り組みを強められるかどうかが問われよう。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2023年08月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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