【余禄】:米国が国内総生産(GDP)を初めて発表したのは…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:米国が国内総生産(GDP)を初めて発表したのは…
米国が国内総生産(GDP)を初めて発表したのは今から80年前の1942年だった。国の豊かさを表す指標として世界に広まったが、米政府が使い始めたのは戦争遂行に必要な国力を把握するためだ。考案した学者も「国民の福祉はほとんど測れない」と認めていた
▲ロバート・ケネディ元米司法長官の演説が問題点を指摘している。「数字には大気を汚す経済活動も核弾頭も含まれる。けれども子どもたちの健康や教育の質は測れない。夫婦の絆の強さや私たちの思いやり、国への深い愛情も」
▲岸田文雄政権は「日本のGDPは2022年度に戦後最大になる」と強気の予測を示している。だが「戦後最大のGDP」を目標にしたアベノミクスが成長と効率を優先した結果、コロナ禍で格差や孤立があらわになった
▲福井県立大准教授の高野翔さん(38)はヒマラヤの小国ブータンで「国民総幸福量」という指標の調査に加わった時の驚きが忘れられない。小さな村で若い男性に「病気になった時に頼れる人は何人いますか」と尋ねたら、当たり前のように「50人ぐらいですね」と答えが返ってきた
▲生活水準だけでなく、地域のつながりや自然環境にも配慮したものだ。高野さんは「人と人の支え合いというGDPに含まれない価値がとても大事にされている」と語る
▲格差や孤立は各国が抱える課題だ。岸田首相は「新しい資本主義で世界をリードする」と強調する。ならばGDPの欠点を補う指標作りに率先して取り組んではどうか。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2022年01月31日 02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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