【社説②】:GDPプラス 好材料を生かし力強い成長に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:GDPプラス 好材料を生かし力強い成長に
コロナ禍からの景気の持ち直し基調が、明確になってきた。今春闘の賃上げを消費の活性化につなげ、経済の好循環を実現する必要がある。
2023年1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比の年率換算で1・6%増だった。22年10~12月期の実質成長率が今回、プラスからマイナスに改定されたため、3四半期ぶりのプラス成長となった。
GDPの過半を占める個人消費が前期比0・6%増と、4四半期連続で伸びた。経済活動の正常化で外食や宿泊などが上向き、自動車の販売も好調だった。
消費の回復は企業業績を押し上げている。鉄道や百貨店などの業績が改善し、23年3月期決算で上場企業の最終利益の合計は過去最高水準になる見込みだ。
GDPの成長率が堅調だったこともあり、日経平均株価は1年8か月ぶりに3万円を突破した。
そうした好材料を生かし、経済を力強い成長に導きたい。
今春闘では、大手企業で労働組合の要求に対して満額回答が相次いだ。連合が求めた5%を上回る賃上げ回答も目立った。4月以降の賃金に反映される。
ただ、消費には物価高の悪影響が懸念されている。3月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3・1%上昇と、高い伸び率が続いている。
物価高を克服し、消費をさらに拡大させるには、賃上げを今春闘だけに終わらせず、継続することが重要だ。政府は最低賃金の引き上げなどで、幅広い労働者の賃金の底上げを図らねばならない。
企業の設備投資は0・9%増と2四半期ぶりのプラスだった。LED照明など電気関連の設備への投資が増えたという。
だが、伸び率は低い。脱炭素やデジタル化、人手不足に対応する省力化などに企業の積極的な投資が欠かせない。好業績の企業は利益を 貯 め込むのではなく、攻めの投資に振り向けてほしい。
一方、輸出は4・2%減と、6四半期ぶりのマイナスとなった。コロナ禍が直撃した20年4~6月期以来の大きな減少率だ。海外経済の減速で、自動車や半導体製造装置が低調だった。
米欧の中央銀行による急速な利上げにより、海外経済の先行きは予断を許さない。米中堅銀行の相次ぐ破綻で、信用不安がくすぶっていることも気がかりだ。
政府・日本銀行は金融不安が再燃した際、迅速に対処できるよう、備えを万全にしてもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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