【社説①】:GDPマイナス 消費後押しする政策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:GDPマイナス 消費後押しする政策を
2022年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、年率換算で前期比1・0%減と2四半期ぶりのマイナス成長となった。
新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大で、GDPの半分以上を占める個人消費が伸び悩んだ。ワクチンや携帯電話など輸入の伸びが自動車など輸出の伸びを上回り、全体を押し下げた。
日本経済の成長力がコロナ前の水準に依然として戻っていないことの表れと言えよう。
4~6月期は外食や旅行などのサービス消費が戻りつつあり、プラス成長が見込まれている。
ただロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰や、米利上げの影響による円安などのリスクは多く、楽観はできない。
着実な成長につなげるためには個人消費の回復が欠かせない。
政府は感染拡大抑制に目配りしつつ、国内の消費を後押しする政策をより強く進めるべきである。
1~3月期の個人消費は0・03%減だった。34都道府県にまん延防止等重点措置が適用されていた中では底堅いとの見方もある。
足元には明るさが見られる。さまざまな業種に景気の実感を聞く4月の景気ウオッチャー調査は2カ月連続で改善した。大型連休中も観光地などで人出が増えた。
コロナの重症者数が急増していないためだろう。今後もワクチンの追加接種など、感染対策の徹底が経済再生には不可欠である。
円安と輸入物価上昇による物価高は家計の負担を増やし、個人消費回復の足かせとなっている。
日銀は「円安は経済全体にはプラス」として、金融緩和をさらに拡大する。一方で政府は円安に警戒感を示し、物価高対策に赤字国債を発行して補正予算を組む。
生活の下支えに対策は必要だ。だが国民の将来不安につながる財政赤字を膨らませて対策を打つのに、金融政策では物価高の要因である円安をなお志向している。
政府と日銀はかみ合っていないのではないか。日銀は緩和に傾斜しすぎた姿勢を一度修正する必要があろう。
政府は訪日観光客の受け入れ再開に向けて、4カ国を対象に小規模ツアーの実証事業を近く行う。
コロナ前には国内で年間5兆円近いインバウンド消費があった。足元の円安は訪日観光には追い風であり、経済界からは本格的な再開を期待する声が出ている。
拙速な再開は感染再拡大を招く恐れもある。政府には感染抑止を前提に丁寧な対応を求めたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年05月20日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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