【社説①】:日本GDP4位 デフレ完全脱却で再浮上図れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:日本GDP4位 デフレ完全脱却で再浮上図れ
日本の名目国内総生産(GDP)が世界4位に転落した。最近の円安や過去のデフレが要因だ。デフレから完全に脱却して、経済の成長軌道を早期に取り戻したい。
内閣府が発表したGDP速報値で、2023年の日本の名目GDPは前年比5・7%増の591兆4820億円となり、ドル換算では4兆2106億ドルだった。
既に発表されたドイツの名目GDPは4兆4561億ドルで、日本はこれを下回り、米国、中国、ドイツに次ぐ4位となった。
名目GDPは物価上昇で押し上げられるほか、国際比較では為替相場に左右される。日本が4位になったのは、円安でドル換算値が目減りしたことや、ドイツの高い物価上昇による面が大きい。過度に悲観する必要はないだろう。
しかし、日本経済の長期低迷を反映しているのも事実だ。
日本は、1968年に旧西ドイツを抜いて世界2位の経済大国となった。その後、バブル崩壊後の不況の長期化で2010年に中国に追い抜かれ、3位になった。
長引くデフレの中で、企業はコストカットを最優先し、賃上げや投資を怠った。それが、さらに物価を押し下げる悪循環に陥り、名目GDPが伸びなかった。
現在、日本経済は、その連鎖を断ち切り、経済の好循環を実現できるかどうかの転換点にある。
企業業績は好調で、主要上場企業の24年3月期決算の最終利益は過去最高となる見通しだ。株式市場で、日経平均株価はバブル期の最高値に迫っている。訪日外国人客の消費も急回復している。
そうした好材料をデフレ脱却につなげるには、まずは春闘で、企業が物価高を上回る賃上げを行うことが不可欠だ。それが消費を活性化し、好循環が生まれれば、GDPの再逆転も可能となろう。
現状は、景気回復に足踏み傾向もみられる。23年10~12月期の実質GDP速報値は、前期比の年率換算で0・4%減と、2四半期連続のマイナス成長だった。
個人消費が前期比0・2%減と振るわず、企業の設備投資も0・1%減だった。設備投資は、建築関係の人手不足で計画が滞っている可能性があるという。
今後の安定的な成長には、人手不足の克服もカギとなる。省力化投資による生産性の向上、働き方や処遇の改善など、企業はあらゆる手を尽くしてもらいたい。
GDPの世界4位への転落を、日本全体でデフレ下の意識を変革していく契機とするべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月16日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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