【社説②・03.11】:自民党大会 政権を担う責任が感じられぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.11】:自民党大会 政権を担う責任が感じられぬ
批判を覚悟して難題に取り組み、国政を前進させていく。そうした責任政党の総裁としての気概が感じられなかったのは極めて残念だ。
自民党が党大会を開き、地方創生や防災庁の設置準備を重点政策に掲げた今年の運動方針を決定した。運動方針には「令和版政治改革大綱」の策定も盛り込んだ。
自民党は1989年、リクルート事件を受けて政治改革大綱をまとめた。派閥パーティーの自粛や政治資金の寄付の限度額を見直すといったルールを示している。
先の派閥の政治資金規正法違反事件は、自分たちで決めたことを守らなかったために起きたものだ。新たな大綱を作っても、信頼されるとは思えない。
石破首相は総裁演説で、2009年の野党転落を振り返り、「もう一度、あのときの謙虚さを取り戻したい」と述べた。
自民党が世論の厳しい批判にさらされているのは、政治とカネの問題が原因と首相は考えているようだが、果たしてそれだけか。
少数与党の石破政権は、高校授業料の無償化や、所得税の課税最低限から生じる「年収の壁」の引き上げといった野党の主張を次々に受け入れている。
様々な政策の妥当性や効果、また財源の確保を考えず、野党の協力を得て政権を維持するだけでは、政権の担い手としての存在感が感じられない。
昨年末の自民党の党員数は約103万人で、1年間で6万人超減少した。身内でさえ今の自民党に失望しているのではないか。
首相はまた、党大会前日の行事で「国民に受けることばかりをやっていると国は滅びる」と強調したが、今の首相の姿勢はまさにそれではないか。
政府は、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える高額療養費制度について、8月に予定していた負担上限額の引き上げを見送ることを決めた。
負担増に反発する声を受け、政府は2月、長期の治療が必要な患者の負担を据え置くとしたが、それでも反発はやまず、今年は予定通り実施するが、来年以降の増額を再検討すると表明していた。
今回、計画全体が先送りとなった結果、既に衆院を通過している当初予算案は参院で再修正され、その後、もう一度衆院で可決しなければならない可能性がある。
政府・与党はまた、年金改革関連法案の国会提出も夏の参院選後に先送りする方向だという。政権の定見のなさが目に余る。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月11日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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