《社説②・11.21》:市街地再開発 公共性を強く意識したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.21》:市街地再開発 公共性を強く意識したい
地権者らが事業主となり、細分化された土地を集約して高層ビルなどに建て替える市街地再開発事業に、国や自治体が巨額の補助金を出している。
全国の状況が、共同通信の調査で明らかになった。2023年度末時点で進む118の計画の約9割に補助金が投じられ、総額は1兆543億円に上った。
事業費に占める補助の割合は全体で12・4%。地価が相対的に安く採算の取りにくい地方ほど補助への依存度が高く、半分以上を公費に頼るケースもあった。
無計画に広がった街並みを再整備する事業は、活性化や防災などの観点で高い公共性を持つ。新たな「街の顔」をつくる取り組みを行政が補助金で支えるのは、当然とも言えるだろう。
ただ、その計画が補助に見合う内容かどうかは、十分に吟味しなければならない。
地権者と協力して再開発を進める事業者が、利益確保を優先して富裕層や投資家が買い手となるタワーマンションの建設を主導するケースもみられる。
東京など大都市を中心に目立つほか、一部の地方都市にも大型の案件が出始めているという。住み替えを繰り返す富裕層の「タワマン愛好家」や転売益を狙う投資家らの需要を集め、高値で取引されている実態もある。
地権者から見ると、高層のマンションを建てて床面積を増やした上で売却しなければ、事業として成立しにくい事情もある。
こうした構造の下では、補助金で納税者が広く支えている事業にもかかわらず、恩恵が地権者や開発業者に偏ってしまう。
大切なのは、当事者に計画を任せきりにするのではなく、公共性を意識し、街づくりの一環に位置付けていく視点である。
計画がほぼ決まった後になって説明会を開くような対応では、地域住民の反発を招く。補助を決める自治体は、関心を寄せる人が関わることのできる場を積極的に設けていくようにしたい。
県内でも、今回の集計対象外だが、長野市の長野駅善光寺口近くに再開発の計画がある。総事業費は186億2千万円を予定。国、県、市から、28・4%分の52億8千万円の補助を見込む。
地権者らでつくる再開発準備組合は今年、市の担当部署とも連携して住民アンケートや若者との意見交換会を実施。意見を取り入れようとしている。
市民の幅広い納得を得ながら進められるかが問われている。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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