【社説①・02.25】:維新の情報提供/百条委への信頼傷つけた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・02.25】:維新の情報提供/百条委への信頼傷つけた
斎藤元彦兵庫県知事への告発文書問題を巡る真偽不明情報の拡散に、日本維新の会所属の複数県議が関与していたことが明らかになった。
増山誠、岸口実、白井孝明の3県議が23日会見し、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に、県議会調査特別委員会(百条委)の非公開情報を提供したなどと認め謝罪した。だが、提供の経緯や目的には理解に苦しむ点が多い。
特に、知事の疑惑を調査する百条委の副委員長だった岸口氏と委員だった増山氏が、自らも賛成した非公開のルールを逸脱して情報を外部に漏らした行為は看過できない。
百条委は首長や自治体の不正を追及する強い権限を有し、地方議会の「伝家の宝刀」とされる。その信頼を傷つけた責任は重大だ。
会見によると、増山氏は昨年10月、百条委が知事選への影響を考慮して秘密会とした尋問の音声を録音し、知事選告示日の同31日に立花氏にデータを提供した。音声には、百条委が調査対象外とした元西播磨県民局長の私的情報に触れた片山安孝元副知事の発言を、委員長が制止する場面が含まれていた。
岸口氏はその翌日、今年1月に亡くなった竹内英明前県議らが知事失職の「黒幕」だと名指しした文書を立花氏に渡す場面に同席した。
増山氏は、立花氏の発信力で「県民に広く事実を伝え、正しい判断をしてほしかった」と主張した。裏で他陣営に情報を流すのではなく、議論の場で非公開に反対し、自らの責任で有権者に訴えるのが筋である。一方、岸口氏は提供した文書の内容が「事実か判断できなかった」と述べた。それが拡散される可能性は認識していたはずだ。どちらも議員の資質に欠けると言わざるを得ない。
立花氏は斎藤氏を応援する目的で知事選に立候補し、受け取った情報をインターネット上で公開した。その結果、「百条委は真実を隠している」との臆測や、竹内氏ら百条委委員への誹謗(ひぼう)中傷が拡散された。
維新は2021年知事選で斎藤氏を推薦し、文書問題でも擁護する姿勢が目立った。だが批判の高まりで一転、県議会の不信任決議で賛成に回った経緯がある。その判断を棚に上げ、不確かな情報で斎藤氏の再選を後押しする意図があったとすれば選挙の公正さを損なう愚行であり、有権者への裏切りにほかならない。維新は事実関係と影響を検証し、党として厳正な処分を下すべきだ。
百条委は近く文書問題に関する報告書を公表する。知事の「パワハラ認定」に慎重だった維新会派が意見を撤回し、合意に至る見通しだ。結論に疑義が生じないよう、県民への丁寧な説明が欠かせない
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月25日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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