《社説①・11.21》:子供の自殺防止 すべての大人が当事者だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.21》:子供の自殺防止 すべての大人が当事者だ
政府が自殺対策白書を公表した。2023年の小中高校生の自殺者は513人だった。過去最も多かった22年の514人と同水準で高止まりする厳しい状況である。
全世代の自殺者が総じて減少傾向にあるなか、新型コロナの影響が広がった20年に急増して以降、500人前後で推移している。
その数字の向こうに、一人一人かけがえのない未来があったはずである。それなのに、周囲がその予兆に気づきながら、防げなかった例が少なくない。
白書は22、23年の事例について、それ以前に自殺を図ったことがあるかどうかを分析した。過去1年以内に未遂があった例が過半数を占めていた。小学生と高校生の女子では、1カ月以内に未遂があった例が目立った。
自傷・自殺未遂で救急搬送された例を日本臨床救急医学会が分析している。全体の1割が18歳以下で、うち精神科受診歴、自傷・未遂歴ありがそれぞれ6割を超えた。手段では、手に入れやすい市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)が7割近くを占めた。
福岡資麿厚生労働相は記者会見で「未遂者への支援を強化したい」と述べた。医療機関と各種支援窓口との連携をより確かなものにしていく必要がある。
一方で、子どものSOSは分かりにくい一面もある。
白書は09~21年の原因・動機の分析で、小学生は家族からの叱責や親子関係といった家庭問題、中高生は健康問題や進路の悩みを含む学校問題が多かったとした。同時に目立つのが、3、4割に上る「不詳」だ。
こども家庭庁が、子どもの自殺に際して学校などがまとめた報告書を調べたところ、約45%が「以前と変わりなく出席」していたという。自殺の危険や、何らかの変化を周囲が気づいていたのは3割にとどまった。
こうした現状は、子どもは自分が抱える問題の深刻さや対処の仕方が分からず、周りに打ち明けたり表現したりできないことが多々あることを示している。
LINE(ライン)や電話による相談窓口やスクールカウンセラーの拡充、予防に取り組むゲートキーパーの養成といった対策は、長野県を含め進みつつある。それでも防ぎ切れていない。
家庭、学校、地域、行政など、子どもにかかわるすべての大人が当事者として、目を凝らし、耳を澄ませて子どもに向き合うことから始めたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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