【社説・11.24】:政府の経済対策 「規模ありき」でいいのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.24】:政府の経済対策 「規模ありき」でいいのか
「規模ありき」でかき集めた政策が、物価高にあえぐ国民の暮らしを本当に改善できるのか。甚だ疑問だ。
政府が新たな経済対策を閣議決定した。民間支出などを含めた総額は39兆円に上る。裏付けとなる2024年度補正予算案の一般会計から13兆9千億円の支出を見込む。昨年度の補正予算を7千億円上回る規模だ。
中には当初予算に入れるべき政策や中長期的な事業も散見される。補正予算は財政法に従い、緊急に必要となった経費に限るのが筋だ。
そもそも政府の経済財政運営の指針「骨太方針」では、新型コロナウイルス対策で膨らんだ歳出構造を「平時に戻す」と掲げている。23年度に続き巨額の補正予算案を組んでいては財政健全化の本気度を疑われても仕方あるまい。
政府は今夏、25年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が34年ぶりに黒字化するとの試算を公表した。これまで通り補正予算の財源を国債に頼るなら、黒字化が見通せなくなるのは確実だ。軸足の定まらない対応と言わざるを得ない。
補正予算案が膨れ上がった責任は石破政権にある。石破茂首相は衆院選公示日の第一声で「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」と宣言していた。自民、公明両党の苦戦が予想された選挙対策だったのは明らかだろう。
象徴的なのは電気・ガス料金の補助金を来年1~3月に再開することだ。使用量が増える冬に家計を支える狙いは分かるが、そもそもはロシアのウクライナ侵攻で燃料価格が一時的に高騰したことへの時限措置だったはずだ。燃料価格は落ち着き、大手電力会社の多くが過去最高益を上げた。今の料金体系が適切かを検証する方が先ではないか。
継続が決まったガソリン料金への補助金も、石油元売り会社に給付する今のやり方で十分に家計を支援できているのか疑念が残る。恩恵は車を持っている人に限られ、脱炭素化にも逆行する措置である。少なくとも廃止時期を明確にする必要がある。
住民税の非課税世帯に3万円を給付する政策は、資産があって裕福な高齢者も対象となる。低賃金で働く人を含め、物価高で困窮する層に絞った支援策を探るべきだ。貴重な財源は、真に支援が必要な人たちや地域に重点的に振り向けてもらいたい。
経済対策全体を見ても急ごしらえの印象だ。地方創生の交付金は25年度予算での倍増を掲げただけで中身は曖昧なまま。過去10年の効果や事例を検証し、自主的で特色ある取り組みにつなげてほしい。
安倍政権以降の自民1強体制下で歳出のたがが緩み過ぎた。少数与党となった今こそ、与野党一体で財政規律を取り戻さなければならない。
補正予算案を審議する28日召集の臨時国会で、政府・与党は政策協議を進める国民民主党だけでなく、他の野党の意見も真摯(しんし)に受け止めて議論を深める必要がある。その過程で新たなばらまきが生まれるようでは本末転倒だ。各党に自覚と責任を求めたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月24日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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