【社説・12.02】:ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.02】:ワシントン駐在問題 県民へ説明責任を果たせ
県庁内におごりがなかったか。県がワシントン駐在の活動のために米国に設立した、日本の株式会社に相当する「オキナワ・プリフェクチャー・DCオフィス」(DC社)を巡って、さまざまな問題が明らかになっている。玉城デニー知事は、再発防止策を含め県民や県議会に丁寧に説明しなければならない。
県は沖縄の米軍基地問題を米首都で訴える拠点として、翁長雄志県政下の2015年にワシントン駐在を配置した。米議員や議員補佐官との面会などを通じた発信強化や、知事訪米時の訪問先調整などの業務を担っている。
騒音や事件事故など基地から発生する被害の実情について、県自ら米国側に発信することは大いに意義があるといえよう。玉城知事が23年3月の訪米時に面談したハワイ州選出で県系4世のジル・トクダ下院議員は、同年4月の米下院軍事委員会の全体公聴会で在沖米軍基地問題を取り上げた。
当初、非営利法人での登録を目指していたワシントンの事務所は、活動内容から日本の株式会社に相当する法人を設立するのが適当との回答を米国務省から得たことなどから、DC社を15年5月に設立した。
しかし、設立について県議会に報告されていなかったほか、設立に伴い取得した株式が公有財産として管理されていなかったことが明らかになった。地方自治法に基づき議会に経営状況を報告する必要があったものの、報告していなかったことも分かっている。県議会への報告を怠っていたことは、県民から負託を受けた県議会を軽視していると言わざるを得ない。
特に問題なのは、株式会社の形態の法人を設立することを明確に決定した文書が残されていないことだ。政策決定の過程が不明では、県民に対する説明責任を果たすことはできず、検証できなければ責任の所在も分からず、再発防止にもつながらない。
仮に文書が保存され、定期的な見直しが行われていれば、このような問題は防げたのではないか。政策決定過程の文書も保存するよう「公文書管理条例」の制定を急ぐべきだ。
この問題を巡り、県議会野党の沖縄自民・無所属の会と、中立会派の公明、維新の3会派は県ワシントン駐在費用を含む23年度の県一般会計決算の議案に反対し、復帰後初めて決算は不認定となった。
野党はこれまでもワシントン駐在について疑問視し、執行部を追及してきた。3会派はプロジェクトチームを設置、監査請求の動議も提出し、可決された。「資金の流れがおかしい」と疑惑も投げかけている。
県議会は16年ぶりに与野党が逆転した。政治的対立はあるにせよ、ワシントン駐在が基地問題解決に不可欠であるなら、玉城知事は追及に正面から向き合う必要がある。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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