【社説①】:韓国与党大敗 日韓改善流れ止めるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:韓国与党大敗 日韓改善流れ止めるな
韓国の総選挙で、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を支える保守系与党「国民の力」が大敗した。尹氏は残る任期の3年間、厳しい政権運営を迫られるが、日韓間で芽生えた関係改善の流れを止めてはならない。
尹氏は昨年3月の初来日で岸田文雄首相と「シャトル外交」の再開で合意。「つらい過去を乗り越え、新しい世界に向かって共に進みたい」と呼びかけた。
同5月には首相が訪韓するなど日韓トップは昨年中に7回顔を合わせ、信頼醸成に努めてきた。
日韓関係は尹氏の指導力によって劇的に改善した。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は正常化し、北朝鮮の弾道ミサイル情報を日米韓で即時共有するシステムも稼働し始めた。
また尹政権は昨年3月、元徴用工問題の解決策も発表。訴訟で敗訴した日本企業の賠償を、韓国政府傘下の財団が寄付金などを使って原告らに支払う「第三者弁済」を進めている。
日韓の経済団体は同3月、「未来パートナーシップ基金」を創設すると発表した。双方がまず基金として1億円ずつを拠出し、若手人材の交流促進、大学間の連携強化、エネルギー分野などの共同事業に活用する狙いだ。事業に応じて寄付を募る計画だが、元徴用工訴訟の被告になった日本企業が拠出する方法もある。
しかし日本政府の対応は鈍く、尹政権が求める「呼応」には程遠い。岸田首相は訪韓の際、歴史問題について「心が痛む思いだ」と述べたが、もう一歩踏み込んで、誠意ある態度を原告らと韓国社会に示すべきではないか。
総選挙で大勝した野党側が、対日融和策を貫く尹政権への批判を強め、揺さぶりをかける可能性もある。関係改善の基調を確かにするためにも、日本側が積極的に動くときだ。日韓の外務・防衛閣僚会議(2プラス2)など対話の枠組み創設も考えられる。
日韓は来年、国交正常化から60年を迎える。1998年の日韓共同宣言は「新たな日韓パートナーシップ」を掲げた。韓国には60年の節目に「未来志向」の新たな共同宣言を求める声もある。日本側は真剣に受け止めるべきだ。
日中韓3カ国の首脳会談も5月末、ソウル開催の方向で調整している。あらゆる機会をとらえ、日韓関係と東アジア情勢の安定に向けて率直に話し合ってほしい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月13日 07:13:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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