【社説①】:日米の軍事協力 衆議なき一体化を糾す
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:日米の軍事協力 衆議なき一体化を糾す
岸田文雄首相とバイデン米大統領が日米軍事協力の強化に合意した。岸田政権が2022年12月に改定した国家安全保障戦略に沿った内容だが、同戦略は国会の議決も国民の審判も受けていない。
米国との軍事一体化を国民的な議論を経ず、既成事実化するような振る舞いを糾(ただ)さねばならない。
両首脳は会談で、自衛隊と在日米軍の相互運用性を高めるため、双方の指揮・統制枠組みを見直すことで一致。防衛装備品の共同開発・生産に関する定期協議の開催にも合意した。
日本は殺傷能力のある武器の輸出を一部解禁し、迎撃用地対空誘導弾パトリオットの対米輸出も決めており、武器を巡る日米協力はさらに拡大されることになる。
首相の国賓待遇での訪米は、日本の安保政策の転換を米側が評価した結果でもあるが、そもそも国会の関与も国政選挙もなく、平和憲法の理念を形骸化させる政策転換は許されるものではない。
いくら米国と合意しても、国民が幅広く賛同しなければ、合意の有効性すら疑われかねない。
覇権主義的な動きを強める中国に対抗するためとはいえ、日米が「グローバルなパートナー」(共同声明)として軍事一体化を際限なく進めれば、米国の戦争に日本が巻き込まれる懸念も高まる。
日本側には、11月の米大統領選でトランプ氏が返り咲くことも想定し、米国の東アジア関与を確実にしておきたい思惑もあろう。
首相が米上下両院合同会議での演説で、米国第一主義を掲げるトランプ氏の支持層を意識し、米国が引き続き世界秩序を主導するよう求める狙いは理解する。
ただ「日本は米国と共にある」との呼びかけは、米国に常に追従し、軍事・財政負担の一層の用意があると受け取られかねない。
イラク戦争の例を挙げるまでもなく、米国が判断を誤れば、国際情勢に深刻な影響を及ぼす。
首相が「日本は米国の最も近い同盟国」と胸を張るなら、米国が独善的な行動に走る場合には誤りを正し、修正を促す役割があることも忘れてはならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月12日 08:23:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます