【社説②・03.08】:新幹線連結外れ 原因究明を徹底し再発防げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.08】:新幹線連結外れ 原因究明を徹底し再発防げ
鉄道への信頼を損ねる事態が相次いでいる。安全への意識が緩んでいるのではないか。JR東日本はじめ鉄道各社は、運行に関わる安全対策を総点検すべきだ。
東京発新青森・秋田行き東北新幹線「はやぶさ・こまち21号」が6日、上野―大宮駅間を走行中に連結器が外れ、緊急停車した。
乗客約640人にけがはなかったが、多数の新幹線に運休や遅れが生じ、約15万人に影響が出た。JR東は、原因が判明するまで連結運転を中止するという。
国土交通省は、事故につながる恐れのある重大インシデントに認定した。新幹線での認定は2017年、台車に亀裂が見つかった「のぞみ」以来となる。
多くの乗客を高速で輸送する新幹線が走行中に突然分離することなど、あってはならない。一歩間違えば、大事故につながりかねない。国とJR東は、徹底した原因究明が必要だ。
特に深刻なのは、「はやぶさ・こまち」は昨年9月にも走行中に連結器が外れている点だ。
この時、JR東は車両製造時の削り 屑 らしき金属片が運転席の分離スイッチに混入し、誤作動したとみられると発表した。新幹線全96編成のうち10編成で金属片が見つかり、それを除去して再発防止策を講じたという。
今回の車両も当時、調査されていた。それなのになぜ、わずか半年後に再び同様の事態が起きたのか。JR東は、今回は別の原因による電気系統の不具合だとみているが、前回の調査が甘かったと言われても仕方あるまい。
鉄道業界では、信頼を失墜させるトラブルが相次いでいる。昨年7月には、山口市でJR貨物の列車が脱線し、車両の車軸が折れていたことが判明した。
この事故の後、国交省が全国の鉄道事業者などを調査したところ、車輪と車軸の取り付け作業を巡り、156社中50社に記録改ざんの不正が発覚し、JR貨物が事業改善命令を受けるなどした。
11月には北海道で貨物列車が脱線し、JR北海道はレールが腐食していたと発表した。安全を 蔑 ろにする風潮が業界に 蔓延 しているのではないかと不安になる。
日本の鉄道の技術力は、世界的に高く評価されている。その評価が揺らぎかねない。
慢心はないか。効率やコスト優先で、現場に無理が生じていないか。くまなくチェックする必要がある。鉄道の生命線は安全であることを忘れてはならない。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月08日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます