《社説②》:世界経済とG20 分断の悪影響を防がねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:世界経済とG20 分断の悪影響を防がねば
国際社会の分断が各国の景気や国民生活に悪影響を及ぼしている。こうした事態に歯止めを掛けなければならない。
主要20カ国・地域(G20)の財務相らが会議を開き、世界経済の課題を協議したが、共同声明は採択できなかった。ウクライナ侵攻や中東情勢を巡る日米欧とロシアなどの対立が響いた。
米欧の利上げでインフレが峠を越すなど、世界経済は厳しい局面を脱したかのように見える。国際通貨基金(IMF)は今年の成長率見通しを上方修正した。
だがリスクは依然残っている。ウクライナ危機の長期化に加え、中東も戦火が広がりかねない情勢だ。エネルギーや食料の価格が再び高騰する恐れは消えていない。成長をけん引してきた中国は深刻な不動産不況に直面している。
共同声明の代わりにG20議長国ブラジルが会議の内容をまとめた文書は、世界経済の先行きについて「不確実性は高い」と警戒感を示した。にもかかわらず景気の安定に向けた処方箋を打ち出せなかった。多国間の枠組みが機能不全に陥っている。
超大国として協調を主導する立場にある米国の動向も心配だ。
11月の大統領選で返り咲きを狙うトランプ氏は、輸入品に高関税を課す方針を示すなど自国優先の姿勢をあらわにしている。バイデン大統領が対抗して保護主義政策を強めれば、世界の対立に拍車を掛けかねない。
分断のしわ寄せを受けているのは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国だ。食料不足で多くの人が飢えに苦しんでいる。米国の利上げでドル建ての借金負担が重くなった国も目立つ。
ブラジルは今年のG20で飢餓や貧困問題を重視し、グローバルサウスの発言力を高めたい考えだ。資金を拠出するIMFや世界銀行の運営への関与を強める意向を示している。格差是正のために、富裕層への課税強化で各国が協力していくことも提案した。
G20は政治的体制が異なる国の集まりだが、貧困などグローバルな課題には協力して取り組む責任がある。途上国の意見をくみ取り、支援を拡充しなければならない。主要国は国際的な連携の立て直しを図るべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月03日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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