《社説①》:露のベラルーシ核配備 危機深める愚挙許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:露のベラルーシ核配備 危機深める愚挙許されぬ
核戦争のリスクを高めかねない愚かな行為だ。ウクライナ侵攻を続けるプーチン露大統領が隣国ベラルーシに戦術核兵器を配備すると表明した。
ベラルーシはかつて、憲法で核兵器を配備しないと定めていた。プーチン氏に近いルカシェンコ大統領の主導で昨年2月、国民投票を実施しこの条項を削除した。
ロシアは核兵器が搭載できる爆撃機を提供し、弾道ミサイル「イスカンデル」を配備している。7月1日までに戦術核の保管施設を完成させる方針だ。
旧ソ連は冷戦期、ロシアのほかベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンに核兵器を置いていた。1991年のソ連崩壊を受け、ロシアは96年までに国内に移した。
国外への核兵器配備は27年ぶりとなる。北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)が反発するのは当然だ。
プーチン氏は米国がNATO加盟のドイツやイタリアなど欧州諸国に戦術核を配備している点を挙げ、自らを正当化している。
だが、地域を不安定化させたのはロシアだ。ベラルーシへの核配備はNATOとの全面対決につながる恐れがある。
プーチン氏は英国がウクライナに劣化ウラン弾を提供することへの対抗措置だとも説明する。
劣化ウランは核兵器や核燃料を製造する過程で生じる放射性物質だ。鉄や鉛より重くて硬いため、貫通力の大きい砲弾が作れる。
核兵器ではないが、国連環境計画(UNEP)は昨年、「がんのリスクを高める可能性がある」と指摘している。提供は慎重であるべきだ。
ただ、通常兵器である劣化ウラン弾と大量破壊兵器を同列視する主張は受け入れられない。
ロシアは核兵器による脅しをエスカレートさせ、米国との核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行停止を表明したばかりだ。
核拡散防止条約(NPT)は米露英仏中の5カ国に核兵器保有を認める一方、核の拡散防止と軍縮に取り組むことを義務付ける。
プーチン氏は国際条約を順守し、ベラルーシへの核配備計画を撤回すべきだ。時計の針を冷戦時代に巻き戻すことは許されない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年03月28日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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