《社説①》:女性当選者の増加 地方発の変化を広げたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:女性当選者の増加 地方発の変化を広げたい
統一地方選は、投票率低下や議員のなり手不足など課題を浮き彫りにしたが、前向きな動きも見られた。女性当選者の増加である。
東京では、女性区長が3人誕生し、非改選の現職とあわせて過去最多の6人になった。
女性の数が男性を上回る議会も複数生まれた。千葉県白井市、兵庫県宝塚市、東京都杉並区、埼玉県三芳町では、女性の当選者が過半数を占めた。愛知県日進市、東京都武蔵野市などでは、男女同数だった。議会や自治体、支援団体が、女性候補の擁立に取り組んできた活動が実を結んだ。
東京都北区では、日本維新の会の新人が、選挙期間中に出産しながら、区議選にトップ当選した。本人の努力はもちろんあるが、周囲の支援も大きかったという。
今回の女性候補の躍進には、閉塞(へいそく)感を打破して政治を前進させたいという有権者の危機感や、身近な政策課題にもさらに取り組んでほしいという期待感が示された面もあるだろう。
東京都豊島区長に当選した高際みゆき氏は「子育て支援や女性活躍をもっと進めないといけないという声が多かった」と語った。
2018年に施行された候補者男女均等法は、国会や地方議会の選挙で、男女の候補者数ができる限り均等になるよう政党に求めている。罰則のない努力義務だが、効果がようやく少し表れてきたのかもしれない。
ただ全体としては、女性の候補者数は均等には程遠く、政府が目標に掲げる35%にも届かない。
当選者数の女性割合も同様に厳しい。道府県議選で14%、市議選で22%と、いずれも過去最高だったが、まだ不十分だ。
道府県議選のほうが割合が低いのは、政党の関与が強まる選挙ほど女性が立候補しにくいからだとの指摘もある。
女性の立候補を阻む要因として、根強い性別役割分担の意識や、子育て・介護と仕事の両立の難しさ、ハラスメントなど、さまざまな「壁」が立ちはだかっている。
障害を取り除き、立候補の環境を改善する取り組みを、政府、議会、政党は強化すべきだ。衆院選では女性当選者が1割を切っており、対応の遅れが顕著だ。地方発の変化を力強く広げていきたい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月01日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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