たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『ラブ・ネバー・ダイ』_狂おしい男女の愛とオペラへの愛(3)

2016年01月01日 17時49分08秒 | ミュージカル・舞台・映画
 クリスティーヌをめぐって怪人とラウルが争う基本の構図は前編と同じだが、この続編ではさらに、怪人の愛を得られずにクリスティーヌに嫉妬するメグ・ジリー(彩吹真央・笹本玲奈)と、彼女を支える母のマダム・ジリー(鳳蘭・香寿たつき)の愛憎まで加わり、愛憎の力学はより複雑になった。

 だが、それと同時に目立つのは怪人とラウルの等身大化だ。怪人は前作のような超能力を発揮しない。クリスティーヌの息子の父親が怪人だったという意外な設定は驚きだが、父性愛に目覚める怪人という展開にもびっくりする。怪人=パパという家族的イメージが私にはどうもしっくり来ないのだ。

 ラウルの等身大化、というより落ちぶれ方も極端だ。前作での高貴な青年貴族が、ここでは酒に溺れる借金まみれの不愉快な男に変貌している。だが、これではラウルと怪人の争いは対等な勝負にならず、怪人が勝つのは当然ということになる。

 前作の日本初演(“88年)でも怪人を演じた市村は、今回も野性的な怪人ではなく、心に傷を負った芸術家としての怪人を好演した。屈折したオーラのある精悍(せいかん)な演技と歌である。

 鹿賀はそれとは違い、甘い柔らかな雰囲気の怪人を造形。音程がやや怪しい部分もあったが、のびやかな歌声だ。市村、鹿賀ともに共通するのは、圧倒的な声量で朗々と歌い上げるタイプの怪人ではないことだ。

 濱田は、四季時代に主演した『アイーダ』のように、強い声で劇的に歌いあげる役柄を得意とする。楚々としたクリスティーヌは濱田向きの役とは言えないが、この舞台の濱田は高度の歌唱力と演技力を駆使し、高音もきれいに出して、迫力のある強い歌姫を表現した。

 一方、これがミュージカル初出演となった歌手の平原は、何よりも透明感のある美しい歌声と品のある容姿が魅力的だ。ただし、主題歌とも言える「愛は死なず」を歌う場面では、歌だけでなく、もっと濃い演技力もほしい。鳳蘭の強い存在感のある演技は、田代の端正で力感のある歌も印象的だった。

 舞台を三度観て改めて実感したのは、ロイド=ウェーバーの音楽の健在ぶりである。『オペラ座の怪人』初演のころのようなピークはとっくに過ぎていて、この作品も名曲ぞろいというわけではないが、それでも「心で見つめて」「月のない夜」などの叙情的な劇中歌は心に残る。特に2幕のクライマックスでヒロインが、舞台の両袖に立つ怪人とラウルに見守られながら、切々と歌い上げる絶唱「愛は死なず」の甘美な美しさは感動的だ。

 そして、大衆的な遊園地の中の劇場で、このオペラ風の歌が圧倒的な魅力を放つという構造の中に、ロイド=ウェーバーの音楽の特質がある。ミュージカルというポップで大衆的な衣装をまとっていても、ロイド=ウェーバーの作品の中心にあるのは、やはり19世紀型オペラへの過剰な愛なのだ。『ラブ・ネバー・ダイ』という題名は、登場人物たちの狂おしい愛の葛藤を表すと同時に、ロイド=ウェーバー自身の強いオペラ愛が決して「死なない」ことをも語っているように思われる。」

(『ミュージカル』2014年5月-6月号より)。

年の始めに祈る

2016年01月01日 17時39分00秒 | いわさきちひろさん
FBでいわさきちちひろ美術館の記事をシェアして書いたものです。

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「赤いシクラメンの
その透き通った花びらのなかから
死んでいったその子たちの
ひとみがささやく
あたしたちの一生は
ずーっと戦争の中だけだった」
(いわさきちひろ『戦火の中の子どもたち』より

 ちひろさんは御自身が第二次世界大戦を生き延びた経験から世界中の子どもたちが平和でありますようにと願い続けました。今この瞬間も子どもたちが犠牲になっている混沌とした世界の現実をどんな気持ちでご覧になっていらっしゃるでしょう。
ちひろさんの願いが世界中に届きますようにと祈ります。

https://www.facebook.com/chihiro.tokyo/?fref=photo


ちひろ美術館・東京 Chihiro Art Museum Tokyoさんの写真

ちひろ美術館・東京 Chihiro Art Museum Tokyo
17時間前 ·


謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本年が皆さまにとってより善き年でありますようお祈りいたします。
いよいよ今年2016年夏、安曇野ちひろ公園に「トットちゃん広場」がオープンします。『窓ぎわのトットちゃん』にちなんだ電車の教室も再現されます。
最新情報は特設WEBサイト(http://www.chihiro.jp/totto/)をご覧ください。

皆様のご来館をスタッフ一同心よりお待ちしております。

Season’s Greetings
May the New Year be filled with peace and bring you and everyone else in the world happiness and success.
In late July 2016, we will celebrate the grand opening of Totto-chan’s Square, a new park next to the Chihiro Art Museum Azumino.
For the latest updates, please take a look at the official Facebook page: https://www.facebook.com/chihiro.totto.
We are looking forward to your visit!

(T.K.)

画像:いわさきちひろ 2016年カレンダー(表紙)