*畜舎の外
バティスティ「子供たち、風笛が聞こえるぞ」
音に惹かれて外に出て、大人達はそれぞれ小さな子供を抱き上げる。
ピエリーノ「そうだ、風笛だ、本当の風笛だよ」
ベッティーナ「母さん、風笛だよ」
オルガ「どっち?」
ウスティ「地主の家だ」
ペピーノ「あっちの方角だ」
ブレナ「今夜はとても冷える。(小声で)しずかに!」
バティスティーナ「上手に吹くこと!」
フィナルダ「もうクリスマスよ」
澄んだ空気が肌をさす。空を見上げる人々。
ベッティーナ「じいちゃん、お月さん」
アンセルモ「お月さんが笠をかぶると、雪がどっさり降る」
バティスティ「だが寒さが続くと・・・」
ベッティーナ「なぜ笠を?」
アンセルモ「大地が雪を待っている」
ステファノとマッダレーナは黙って見つめあう。目をふせるマッダレーナ。
*ポプラの並木道
暗闇の中、歩くステファノの顔。
ステファノ「(自分を励ますように歌う)“トーネ、トーネ、狼の所へ走れ“(梟の泣き声に更に大声で)”トーネ、トーネ、ぼくはここにいる”」
*地主の屋敷
遠景。真っ暗な中、アーチ型の石垣の門の中に、“淡い光を放つ屋敷が見え、夜空にオルゴールのように響くピアノの音。ステファノが門をくぐると、人の気配を感じた犬が吠える。
地主「だれだ? だれだ?」
地主が明るい灯の下で母親に見守られ、<トルコ行進曲>を弾く息子の姿を窓の外からのぞいている。室内には、母方の親戚らしい者達が10人ほど、神妙に坐っている。<トルコ行進曲>を奏き終えて、母や来客の拍手をうけ、エレガントに次の曲をひきはじめる息子。風笛のメロディーに似た曲。窓の外から見つめて、一瞬、顔をゆがめる地主。庭にいた管理人が、折から降りはじめた雪に、「雪だ」とつぶやく。
*地主の屋敷の庭こけ
雪明かりに包まれる。屋敷のロングショット。
*農村の外
しんしんと降る雪の中、分益農場の夜も静かにふけてゆく。
*四家族の寝室
それぞれの寝室で、眠りこけるみんなの寝顔。
(1990年フランス映画社発行のパンフレットより引用しています。)