大学セミナー・ハウス 宿泊棟
所在地:八王子市下柚木1987-1
設計 :吉阪隆正+U研究室
完成年:1965(第1期)以降20年掛けて施設を増設。
備考 :2005年に大半の宿泊ユニット群が解体撤去
Photo 2000.10.18(5枚とも)
上写真は、第2群・12~17号棟(解体)
八王子にある大学セミナー・ハウス(八王子セミナーハウス)は首都圏にある大学が資金を持ち寄って作った研修施設。起伏のある山林に、事務棟、講堂、セミナー室、宿泊棟、野外ステージなどが点在する。
「日本におけるDOCOMOMO100選」にも選定された、残すべきモダニズム作品とされているが、老朽化と利用率の低下を理由に、ユニットハウスと呼ばれる宿泊棟の大半が解体された。第1群と第2群の一部のユニットハウスと、それ以外の事務棟、セミナー室、講堂などは全て現存しているが、特色のある当初の宿泊スタイルは失われてしまったようだ。
第3群の建物群(全て解体)
宿泊棟は2人用のユニットハウスが10~15棟程度集まって、その中に少し大きめのセミナー室建物が一つあるのが一つの「群」とされ、この宿泊ユニット群は第7群まであった。
第2群 セミナー室(現存)と、1~5号棟(解体)
第2群では、セミナー室(木の幹と葉が白抜きで描かれた建物)は残されたが、その周囲のユニットハウスは解体された(写真に写っていないユニットハウスの中には残されたものもある。)。
第1群 1~12棟(現存)
第1群についてはセミナー室も含めて全てが残されているが、これらユニット宿泊棟での宿泊は、現在は受け付けていない。
第1群 右:セミナー棟、左:13~8号棟(現存)
施設群は地形を極力いじらずに建てられていて、コンクリートの基礎杭の上にプレハブ的な小屋が載った状態だった。基礎があればどこにでも建物は建つというモダニズムの考えを反映するかのように、山林のやや急な斜面に基礎杭を打って宿泊棟は造られている。
高床状になっているのを明瞭に示そうとしたのか、入口部分のステップも簡素で、2、3の杭を打っただけだったりする。ぼんやり段々を上り下りすることはできない。入口の階段というものが嫌が上でも意識される。
ユニットハウスのレイアウトなどは、私の恩師、戸沼幸市(元早大建築学科教授・現名誉教授)がU研在籍時に行ったという。小さな谷が入り込む地形に合わせて、またそれら建物群がセミナー室の建物を中心にまとまりを持つよう、建物群は少しずつずらしながら馬蹄形に並べられている。
ユニットハウスの室内にはベッドと、小さな机とイス、卓上ライトがあるだけ。風呂・シャワー、洗面、トイレは群の中にはなく共同。もちろんエアコンなどもなかった。
夏は暑く、冬は寒く、なかなかの耐久生活を強いられる施設で、昨今の快適なセミナー施設とは相当異なる。ただもちろん施設利用料はかなり安かった記憶がある。保養施設ではないので、このような考え方の研修施設があっても良いとは思うが、引率をする先生にも学生の側にもある程度の覚悟が求められるためか、最近はこの手の施設はあまり人気がないのかもしれない。
一方、他の宿泊棟には風呂やトイレ、洗面が備わっており、ある意味使い易くなっている。
大きな大学は自前の研修・セミナー施設を避暑地や保養地に保有していて、それらと比較すると、サービスがやや見劣りしてしまうと感じられるかもしれない。ただ、建築を学んでいる学生等は結構関心を持っている施設である。
キャンプ場のような施設なので、夜間は真っ暗に近い。ところどころに街灯が建つのみで、トイレに行くにも懐中電灯が要る。また、コテージ周辺の道は狭く、山中のような階段だらけで、バリアフリーなどということを言い出したら、完全に不適格だ。セミナー施設ではあるが、ほとんどキャンプ場とか山中の村である。逆にいえば、不便さや危険性を通して、バリアフリーを含む、建築の安全性や利便性に思いを巡らせる場なのかもしれない。
現在、有志を中心に、大学セミナー・ハウスを使いながらつくる「ぐるぐるつくる大学セミナー・ハウス」という取り組み(ワークキャンプ)も行われているが、残されたユニットハウスについても解体の予定であるという話もある。印象的な事務棟などは健在だが、全体としての様相はかなり様変わりしているようだ。
Wikipedia > 大学セミナー・ハウス
ぐるぐるつくる大学セミナー・ハウス
> 大学セミナー・ハウスと吉阪隆正
> 活動主旨
> ぐるぐるつくるブログTokyo Lost Architecture
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