「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

           ”旅は憂いもの辛いもの” だったが

2012-10-13 06:56:23 | Weblog
昔のことわざに”旅は憂いもの辛いもの”というのがある。「慣用句ことわざ辞典」(三省堂)によると”交通機関が発達していなかった昔の旅は歩かなければならず、知人も頼るところもなく、とかく思うようにならず、苦しく辛いものであった”とある。現代の旅はどうか。先日80歳老夫婦で一泊二日で長野へ旅したが”憂いもの”でも”辛いもの”でもなくなっていた。

東京から長野市まで今は新幹線で行けば僅か1時間半だが、59年前僕が学校を出て赴任した時は、急行でも6時間かかった。夜11時過ぎ大勢の知人、友人の万歳の声に送られて上野駅を出発、早朝5時すぎ長野についた。夜行列車でろくろく仮眠もでできない”憂い”旅であった。しかし、今は缶ビールを一本飲んでいるうちに着いてしまう。

信越線の軽井沢―長野間が電化されたのは昭和38年、東京五輪の前年である。横川―高崎間もアプト線で列車はゆっくり、ゆっくり走っていた。それだけに碓井峠の駅弁の釜飯が美味しかった。しかしSL列車で、うっかりトンネル内で窓を開けようものなら、顔中煤で真っ黒になってしまった。旅が”憂いもの”であることを実感した。

公共交通機関も昔はエスカレーターやエレベーターが整備されていなかったから、老人にとっては大変な苦労であったに違いない。東京駅とか上野駅など大きな駅には、荷物を列車まで運んでくれる”赤帽”がいたからよいが、普通の駅では大変であった。荷物といえば最近は大きな荷物を持つ旅人をあまり見かけなくなった。宅急便が発達して、大きな土産物や貰い物は別便で送れるようになったからだろう。

旅は確かに昔のように”憂いもの辛いもの”ではなくなったが、車窓から景色をみる楽しみ、プラットホームで時間を気にしながら熱いそばをすする旅の味あいはなくなった。

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2 コメント

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心構え (chobimame)
2012-10-15 16:13:18
今は飛行機や新幹線を使えば、日本中楽々と移動出来てしまいます。移動は楽なのですが、旅行に行った実感に欠けるのです。しかし体力や時間を考えると、便利な乗り物は有難いのですが、旅情を考えると味気ないですね。先日、芸能40周年63歳になった矢沢永吉のインタビューをNHKで放映していました。その中で、広島から夜行列車に乗って、尻が痛くなり我慢出来なくて横浜で降りたので、今の自分がある。あれが新幹線や飛行機で来ていたら今の成功はない。と言うような話をしていました。
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旅情 (kakek)
2012-10-15 16:50:46
chobimame さん
旅の情けは世の情けということわざももあります。亡くなった僕の両親が、昭和38年、新幹線で京都観光へ行き、列車内で知り合った方と、亡くなるまで親しくしていました。昔は”旅の情け”があったのですね。志賀直哉の「網走にて」も旅情を感じさせますね
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