その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

とある職場の風景 「手仕事、是か非か?」

2012-07-28 06:54:14 | ロンドン日記 (日常)
 こっちで3年ちょっと働いていて思うのは、こっちの人(欧州人)はホントに手仕事(マニュアル・ジョブ)が嫌いです。別に、折り紙で鶴を作ったり、難しい工芸技術や機械技術のことを言っているのではありません。もっと普通の日常業務のことです。

「お客様からの問い合わせ電話の内容を分析して、サービス向上に役立てよう」
「営業データベースから、新サービスのターゲットリストを作って、パンフレットを送付して、営業攻勢をかけよう」
「完了した工事について、お客様に請求書を発行して、回収しているか、まとめて欲しい」
「毎年更新時期が来るソフトウエアのメンテナンス契約について、どのくらい値下げが実現できているか調べて、更なるディスカウントを得るための方策を考えよう」

 などなどの、いろんな業務課題や改善提案があるのですが、これらの情報が業務システムでコマンド一つで出てくる場合は良いのですが、それが、出来ない場合、私とナショナルスタッフとの会話のパターンは決まっています。



「おっしゃる通り、それは大切なデータ、分析です。でも、今のシステムではこのデータは取れないんです。まず、システム改造が必要です。」

「じゃあ、とりあえず手作業でやってみてよ。別に対象は絞ってもらって構わないから。今の状態じゃ、何がどうなっているかわからないし。」

「手作業でやるには、日々の業務で手いっぱいで時間がありません。そこまでしなくても、だいたいのことは感覚でもわかります。」

「一週間も、一か月もかかるわけじゃないでしょう。まず、手を動かしてやってみると意外と新しい発見もあったりするものだよ」

「じゃあ、作業を業者に出してもいいですか(私はそんな手作業をやるために働いているのではありません)?予算には積んでいませんから、予算外になりますけど。それと、この間のXXXXの仕事もあるので、優先度を明確にしてください」

「・・・・」

てな会話を何度してきたことか。



 これが、日本人相手だと、1,2日である程度のデータを、手作業ではあるのの、時間外勤務をしても、まとめてくれます。こっちの人は、何があってもシステム、システム。「確かにシステムがあることにこしたことはないけど、世の中そんなに揃っているわけではないのだから、まずあるもの、できるものから、まずやってそこから考えようよ。ちょっとの無理があるのは当たり前」というのが、私の感覚です。日本人の多くの人はそう考えるのではと思います。

 ただ、この私の日本人感覚が良いのか、どうだか、ちょっと段々迷って来たところがあります。こうやって、力づくで、時間を割いて、手作業でやっちゃうことが、かえってシステムの導入を遅らせて、構造的な問題の解決を遅らせているのではないか?という疑問です。

 こちらのパートナー会社の人達の仕事のやり方や業務プロセスを、垣間見ると確かに、徹底的にシステム化進んでいます。紙は無いし、同じ仕事を私たち5名かけてやっているところを一人二人でやっていたりします。較べると、ちょっと自分たちが恥ずかしいぐらい。こんなことをやっていれば、コスト競争には絶対勝てないなあと実感します。他社から転職してきた社員から、「こんなことをシステム無しでやっているなんて信じられない!」と愕然とされることもしばしばです。仮にシステムがあったとしても、それが業務プロセスごとに別々に存在していたりして、システムとシステムのつなぎは手作業になったりもします。

 システム化の功罪や、システムの導入具合を、日本人の手作業好きだけに原因を求めるのはちょっと極端だとは思いますが、間違いなく、この日本人の強みであるはずの、手を動かしてのボトムアップの思考、行動様式が、システム化とか構造的な抜本改革を遅らせている一因と言うのは間違いないかと思いはじめています。

 ナショナルスタッフの手作業嫌い、システム化推進論には「いろいろ理屈つけているけど、要は、やりたくないんだろ~」という私の本音は変わることはありませんが、手作業を「やりたくないから何とかやらないで済ませよう」ナショナルスタッフと「やってしまう」日本人と、どっちが結果としては良いのか?ということについては、大いに悩んでしまう、今日この頃です。
コメント (2)
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