JAL破綻(2010年1月)したものの2012年3月期の決算では2000億もの営業利益を出し、再上場を果たしたJAL。本書は、破綻の3年前から同社を取材してきた筆者が、破綻前から破綻を経て、復活を遂げるまでのJALの内実をレポートしている。
私自身、丁度この破綻騒ぎの際は日本に居なかったので、新聞やWebで得ていた断片的な情報を整理したいと思い、本書を手にとって見た。破たん前のJALの「粉飾」決算、経営幹部や労働組合の動き、政治に振り回される再建計画などが、継続的な取材を重ねてきた筆者ならではの臨場感で描かれている。一気に読める。
一方で、稲盛新会長のもとで急速な回復を遂げた部分については、分析は十分とは言えない。筆者の関心は、ジャーナリストらしく経営論よりも社内外の政治的な駆け引きにあるのだろう。私自身の関心はむしろ企業再建のプロセスにある。JALのケースは、今後まだ予断を許さないものの、ケーススタディとして格好の材料を提供していると思うので、今後、専門家によるレポートを期待したい。
(先日、日経新聞で稲盛氏自身による回想の短期連載があり、これはこれで面白かった。が、大所高所からの稲盛さんの振り返りも良いのだが、そうした稲盛さんの経営方針により具体的に社内で何がどう変わったのか?について知りたいものである。)