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週刊誌に連載中の筆者のコラムを編集したものです。大前氏の主張は、個人的に賛成する、しないは、トピックにより様々ですが、ユニークな目の付けどころや切れ味良く、明確な論旨にはいつも感心させられます。
本書にもいくつか気づかされるところがありましたので、ピックアップしておきます。
・国家にとって最も大切なのは「雇用」(p24)。この20年間、日本はの対外投資は増えているが対内投資(海外企業の日本直接投資)は殆ど増えていない。企業が海外に出て行っているのに海外から投資を呼び込めていない日本は、当然ながら国内の産業が空洞化し、雇用は流出ばかりで創出されない。こんな異常な国日本の景気が良くなるわけない(pp19-20)
・グローバル人材になるためには「ハードスキル(会計・財務・マーケティングといったビジネスの道具)」と「ソフトスキル(民族・国籍・文化・宗教・言語の違う人たちとコミュニケーションを取りながら、ビジネスを円滑に進める力)」が必要。こうした力は会社の中だけでは身につかない(pp65‐68)。これからは「大卒」程度の能力では食べていけない(p64)。
・プレゼンの鍵は「物語」。500名を超える講演ではパワポは使わない。「そのプレゼンの結果、何を達成したいのか」を明確にする。そして、これからのプレゼンテーションは「積み上げ」型(ピラミッドストラクチャーにより論理を積み上げていく方法)よりも「Q&A」型(Q&Aに4割の時間を割く。最初の2割は共通理解の植え付け、そして次の4割を独自の新しい知識の提供に充てる)が良い(pp122-127)。
・日本企業の「集中と選択」の誤りは、単体の商品(テレビ、カーナビ、カメラ等)を軸に選択を行ったことであり機能(研究開発・設計・製造・販売・サービス)で選択と集中を行わなったこと。台湾は後者。強力なリーダシップを発揮する経営者の存在こそ、コモディティ化するデジタル大陸で生き残るのための条件(pp130-138)