その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

平田オリザ 『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 (講談社現代新書)

2014-04-02 22:21:20 | 


 地元図書館の返却コーナーに置いてあったので、何となく手に取ってみました。著名な演劇家の平田オリザさんによる、演劇を通じてのコミュニケーション論、コミュニケーションを通じての日本人論です。

 平易な言葉で書いてあるので簡単に読めますが、内容について十分に理解するのは意外と難しいです。

・「会話」と「対話」は違う。これからは異なった価値観を持つ人と間で生じる「対話」の能力が大切。
・必要な言語運用能力は「冗長率」(意味伝達とは関係の無い言葉が含まれる割合)を低くすることではなく、操作する力
・コンテクストの「ずれ」:簡単に見えるけれどコンテクストの外側にある言葉。コンテキストを理解するのが、コミュニケーションの基礎的能力
などなど、何となく読んでしまうとそのまま読み過ごしてしまいます。

 特に首肯できるのは、これからの日本人に求められるのは「空気を読む能力」や「価値観を一つにする方向のコミュニケーション能力」から「日本人はバラバラ」であることを認めた上で、「バラバラな人間が、価値観はバラバラのままでどうにかして上手くやっていく能力」であり、「協調性から社交性」であるという主張です。その通りだと思います。

 少し残念なのは、章立て、構成に関連性・一貫性が乏しいところでしょうか。どうも頭にすっきり入ってこない原因は編集にあるような気がしました。


(目次)
第1章 コミュニケーション能力とは何か?
第2章 喋らないという表現
第3章 ランダムをプログラミングする
第4章 冗長率を操作する
第5章 「対話」の言葉を作る
第6章 コンテクストの「ずれ」
第7章 コミュニケーションデザインという視点
第8章 協調性から社交性へ


コメント
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