イースターウイークの始まりの日曜日、「マタイ受難曲」を聴きにミューザ川崎シンフォニーホールに行ってきました。昨年は同じくバッハ・コレギウム・ジャパンで「ヨハネ受難曲」を聴きましたが、今年は「マタイ」です。「マタイ」の方が好きだし、ミューザ川崎も初めてなので、とても楽しみにしていた演奏会です。
そして、期待通り独唱、合唱、演奏、其々が素晴らしく、かつそのシナジーに優れた感動的なパフォーマンスでした。中でも、とりわけ光っていたのは、エヴァンゲリスト役のゲルト・テュルクさん。柔らかで香るような語り(歌)が劇的で、目の前に場面場面が浮かび上がるよう。想像力を思いっきり刺激してくれました。独唱陣ではモリソンさんの透き通るようなソプラノ、リンデさんの美しいカウンターテナー、浦野さんの低く響くバスも胸に刺さりました。独唱の出番はそれほど多くありませんでしたが、櫻田さんのテノールも潤いある歌声で、好みでした。
合唱は総勢24名の少数精鋭メンバー。2010年にバーミンガム市響(サイモン・ラトル指揮)で聴いたとき(→こちら)は、100名を超えるような大合唱団かつ児童合唱団付だったので、この人数の合唱で大丈夫なのかと少々心配だったのですが、数は全然問題ではありませんでした。一人一人の歌唱が力強いせいか、24名とは思えないほど、ホールの隅々にまで響き渡る美しいハーモニーでした。
演奏も古楽器の独特の響きが胸に浸みります。ここでも、メンバーは30名ほどで必要最小限の人数のようですが、少人数を感じさせないダイナミックさと繊細が共存する演奏だったと思います。
これらは全て名匠鈴木雅明さんの指揮があってのことでしょう。バッハを知り尽くした鈴木さんの指揮ぶりは後ろ姿を拝見していて、聴く者が本当に安心して音楽に身を委ねられるものです。
パフォーマンスが良ければ良いほど、この歴史絵巻の物語の力強さ、そして音楽の崇高さが身に染みて、感じられます。3時間を超える演奏の間、ステージからの強烈な磁力に引き付けられ、終わった時にはヘロヘロ。でも、この音楽を聴くことができた喜びが体から溢れだす、本当に不思議な音楽体験です。
まあ、敢えて言えば、あの拍手は早すぎでしょう~。まあ、一人や二人のフライング拍手と言うレベルではなかったので、多くの人が思わず拍手してしまったということなのでしょうが、あそこであの拍手が10秒でも我慢してもらえたら、それはもう更に感動的だったのに・・・と思うと残念です。
PS 蛇足ですが、今回は字幕があって助かりました。昨年のヨハネを東京オペラシティ・コンサートホールで聴いた時は字幕無しで、事前に歌詞を持っていくか、プログラムを購入しないと(1000円)、歌詞を追えないと言う、「いくらなんでもそれはひどくないか?」という扱いでしたので、今回は持って行った歌詞に目を落とさずとも、舞台を追えました。これは大感謝です。
≪ミューザ川崎シンフォニーホールのデビューは3階席後方の中央。残響豊かな良いホールですね。≫
バッハ・コレギウム・ジャパン
J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244
日時: 2014. 4.13 (日) 15:00開演
ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:
バッハ・コレギウム・ジャパン
指揮:鈴木雅明
ソプラノI:ハンナ・モリソン
アルトI:クリント・ファン・デア・リンデ
テノール/エヴァンゲリスト:ゲルト・テュルク
バスI:ベンジャミン・ベヴァン
ソプラノII:松井亜希
アルトII:青木洋也
テノールII:櫻田 亮
バスII:浦野智行
曲目:
J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244
Bach Collegium Japan "Matthew Passion"
Bach Collegium Japan
SopranoI= Hannah Morrison
Countertenor= Crint van der Linde
Tenor, Evangelist= Gerd Turk
Bass= Benjamin Bevan
Soprano II= Aki Matsui
Alto II= Hiroya Aoki
Tenor II= Ryo Sakurada
Bass II= Tomoyuki Urano