その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

オペラ「さまよえるオランダ人」/リヒャルト・ワーグナー @新国立劇場オペラパレス

2015-01-27 22:52:53 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 私にとっては、飯守さんワーグナー初体験です。昨年秋の就任公演「パルジファル」では、私はC・D席争奪戦に敗れ行けませんでしたが、随分と評判が宜しかったようなのでこの公演も期待大でした。

 結果としては、4階最深部に陣取った私に十分に熱気と迫力が伝わる満足度の高いパフォーマンスでした。もちろん主要な役柄を固めた非日本人歌手の出来も良かったのですが、特に印象に残ったのは東響のオケと新国合唱団。オケはパーツパーツでは傷もあったのですが、全体として緊張感あふれるワーグナーワールドを彩ってくれました。金管の咆哮や木管の美しいソロなど、失礼ながら、ここまでのワーグナーが聴けるのだと感心し、集中して耳を傾けました。

 新国の合唱団も素晴らしかったです。男性陣の水夫たちと女性陣の村の女たち、どちらもパワフルかつ清らかで綺麗に揃った合唱で、合唱の美しさを十分に堪能させてくれました。

 独唱の主なところでは、ゼンタ役のソプラノ、リカルダ・メルベートさんが大熱演。ちょっと金切り声的な響きが私の個人的好みとはずれるところがありましたが、劇場一杯に響き渡る声量と迫真の演技は、思い込み少女ゼンタの役柄としてはぴったりです。あと、ダーラント役のラファウ・シヴェクさんのバスも、美しく大きな声量で期待以上の出来でした。題名役のトーマス・ヨハネス・マイヤーさんは「さすが」と思うところと「あれ?」と首を傾げるところが分かれたかな。クライマックスなどは流石と唸らせるものでしたが、2幕のゼンタとの重唱はメルベートさんに負けてしまって、ちょっと迫力不足なところもありました。

 演出は過去の再演ですが、第2幕の帆船の舵と糸紡ぎの糸車の相似形や女性合唱陣がオランダ人の肖像画を其々持つシーンなどは考えられていて、美しく感心しました。ラストシーンも私が過去に見た2つのプロダクションとは異なっていて、ゼンダがオランダ船に乗って沈み救済するという作りは新鮮でした。また、1幕と2幕の間に休憩を入れるのも初体験。最後まで体力を保って観劇できるというメリットがある一方で、ワーグナー特有の麻薬的陶酔感を味わうまでには至りません。

 いずれにせよ、主要役柄が非日本人歌手とはいえ、日本でこれだけのワーグナー楽劇が見られれば、私としては十分満足で、オランダ人や救済の動機を頭の中でリフレインしながら帰宅の途につきました。

 最後になりますが、新国のホームページで、飯守さんが自らピアノを弾きながら作品の聴きどころを紹介する30分弱の「音楽講座」がアップされています。これはなかなかスグレもので勉強になります。過去に3回この作品を生で見ていますが、知らなかったこともあり、とてもいい予習になりました。こういう企画は是非、続けてほしいです。


2014/2015シーズン

オペラ「さまよえるオランダ人」/リヒャルト・ワーグナー
Der fliegende Holländer/Richard Wagner

全3幕〈ドイツ語上演/字幕付〉

2015年1月25日 14:00-

オペラパレス
■スタッフ
【指揮】飯守泰次郎
【演出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美術】堀尾幸男
【衣裳】ひびのこづえ
【照明】磯野睦

■キャスト
【ダーラント】ラファウ・シヴェク
【ゼンタ】リカルダ・メルベート
【エリック】ダニエル・キルヒ
【マリー】竹本節子
【舵手】望月哲也
【オランダ人】トーマス・ヨハネス・マイヤー

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団



2014/2015 Season

Music by Richard WAGNER
Opera in 3 acts
Sung in German with Japanese surtitles
Opera Palace

Staff
Conductor IIMORI Taijiro
Production Matthias Von STEGMANN
Scenery Design HORIO Yukio
Costume Design HIBINO Kodue
Lighting Design ISONO Mutsumi

Cast
Daland Rafal SIWEK
Senta Ricarda MERBETH
Erik Daniel KIRCH
Mary TAKEMOTO Setsuko
Steuermann MOCHIZUKI Tetsuya
Holländer Thomas Johannes MAYER
Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Symphony Orchestra
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする