その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

METライブビューイング チャイコフスキー《イオランタ》/ バルトーク《青ひげ公の城》

2015-04-04 12:29:52 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 METライヴビューイングの2本立て企画《イオランタ》/《青ひげ公の城》に行ってきました。この2014-2015シーズンはオープニングの《マクベス》を初め、観たい演目がいくつもあったのですが、なかなか時間が取れず、今作品が初めてです。

 今回の2本立てのプログラミングは、METがチャイコフスキーの《イオランタ》(MET初演)の演出をマリウシュ・トレリンスキに依頼したところ、演出家の方からバルトークの《青ひげ公の城》とのカップリング提案があったとのこと。双方とも童話に基づく話であること、囚われのヒロインがメインである共通点はありますが、《イオランタ》がハッピーエンドで王女が救われる話である一方に、《青ひげ公の城》がおどろおどろしいサイコサスペンスでかなり趣は異なります。明暗の対比を楽しむのか、その差異に違和感を覚えるか、観る人によって印象は分かれるでしょう。トレリンスキ氏は「この2本を一つの作品の一部と二部として構成させた」と幕間のインタビューで答えていましたが、現代風にアレンジされたプロダクションは全編を通じて、演出家の強い意図を感じる個性的な舞台でした。

 私としては、《青ひげ公の城》のすさまじい緊張感に圧倒されました。ユディット役のナディア・ミカエルの取り憑かれたような迫真の演技と歌唱、張り詰めた雰囲気を盛り上げるゲルギー指揮のオーケストラ演奏、そして映像を多用し謎めいた城の空間を築きあげる演出が、絶妙な組み合わせ。観ていて、場面、場面で強力に引きつけられ、心理的にも追い込まれ、下手なサスペンス映画よりよっぽど怖かった。オペラとして見るのは初めてでしたが、これは相当な名演であることは間違いないです。

 《イオランタ》は美しい音楽と題名役のアンナ・ネトレプコとヴォデモン伯爵のピョートル・ベチャワの圧倒的歌唱を初めとした歌手陣が特に秀逸でした。ただ、私は一週間の仕事の疲れが抜けず、前半の侍女たちが歌う子守唄(?)〈花の歌〉を聴いている間に、自分が寝入ってしまう始末。自分として投入感がもう一つだったのが残念。

 このMETライブビューングはホスト役の解説や出演者達へのインタビューがあるのが大きな楽しみの一つです。今回はディナートがホストのもと、ゲルギーやネト嬢へのインタビューが作品の位置づけや見どころを楽しく紹介してくれました。


《イオランタ》/《青ひげ公の城》
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:マリウシュ・トレリンスキ


《イオランタ》
出演:アンナ・ネトレプコ(イオランタ)、ピョートル・ベチャワ(ヴォデモン伯爵)、アレクセイ・マルコフ(ロベルト)、イルヒン・アズィゾフ (エブン=ハキヤ)、イリヤ・バーニク(レネ王)
言語:ロシア語.

《青ひげ公の城》
出演:ナディア・ミカエル(ユディット)、 ミハイル・ペトレンコ(青ひげ公)
言語:ハンガリー語.

Met Opera Live Double bill: Tchaikovsky's Iolanta / Bartók's Duke Bluebeard's Castle

Iolanta cast:
Anna Netrebko, Piotr Beczala, Alexey Markov

Duke Bluebeard''s Castle cast:
Nadja Michael, Mikhail Petrenko

Conductor:Valery Gergiev
Production:Mariusz Treliński
Choreographer: Tomasz Wygoda
A co-production with Teatr Wielki-Polish National Opera.
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