ようやくブームも落ち着いてきた感があるフランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』についての解説本。副題に「60分でわかる『21世紀の資本』のポイント」とあるように、英訳で700ページにわたる専門書を約十分の一の77ページにまとめている。著者は、ネット上の言論界で頻繁に物議を醸すお騒がせ者の池田信夫氏。彼の言説はなるほどと思わせるところも多いのだが、ネット上での彼の頻繁な個人攻撃の文体を読んでいると、人格的には崩壊しているように見受けられる。
著者の人格は差し置いても、本書は『21世紀の資本』をわかりやすくまとめてくれている(ように見える)。資本主義の根本的矛盾はr(資本収益率)>g(国民所得成長率)で表され、すなわち「資本家のもうけが一般国民の所得の伸びより大きく増えるので格差が拡大する」というのがそのエッセンス。本書の前半はその意味するところの解説、後半には3つの論点(①格債は拡大してきたのか、②何が格差の原因か、③格差をいかに防ぐか)について解説している。
私自身、まだ原本をまったく目を通していないので、本書が的確な解説本なのかどうかは判断できないが、流行りの経済理論のさわりを手早く知っておきたい私のような人には良いと思う。アベノミクスへの批判など筆者の我田引水的な記述もあるが、毒はかなり抑えられている。