STAP細胞スキャンダルを追ってきた毎日新聞の科学担当記者によるレポート。新聞等で断片的に読み聞きしていた情報が、本書を読んで、何が論点なのかが整理して理解できる。
客観的で抑制され、かつ平明な文章が、冷静で論理的な筆者のパーソナリティを伺わせる。事実をベースに、論点、第三者の証言、筆者の意見が明確に区別されて記されているので、恣意的、感情的な誘導無しに、読者が自分の頭で考えることができる。
このスキャンダルはあまりにも劇的であるものだから、下手なミステリー小説を読むよりよっぽど面白い。読み出したら止まらず、週末の1日半本書に掛かりっきりになってしまった。
かなり整理されたのだが、それでも残るのは「何故、こんなスキャンダルが起きたのか?未然に防げなかったのか?」ということ。事件の核心である小保方氏についての記述が薄いのが残念だが、現実世界の複雑さ・不思議さを味わうのに、最適の一冊である。