藤田嗣治の作品は、これまで府中美術館での個展や多くの藤田作品を有する箱根ポーラ美術館の企画展などで見てきたが、これまでに覚えがない程の大きなスケールでの回顧展で、世界の美術館から集めた100点以上の作品により藤田の一生を追う企画である。
「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」と絵のテーマも幅広く、年代によって画風も変化するので飽きることがない。彼独特の「乳白色の下地」の裸婦もいくつも展示されている。キュビズムなど当時のパリの画壇の影響も受けながら、独自のスタイルを作り上げた力量は流石。イラストのように見える絵も一枚一枚が強力な引力を発している。
《タピスリーの裸婦》
20世紀の前半という時代に、ロイド眼鏡で、ピアスをしておかっぱ頭のスタイルは、パリと言えども相当目立っただろうし、逆に日本では受け入れられなかっただろう。パリの自由な雰囲気に触れた彼が日本に戻って、第2次世界大戦中には戦争画を描いていたというのは、その心中いかほどのものであったのだろうか。
非常に力の籠った見ごたえある回顧展だった。残念ながら、東京開催は終わってしまったが、10月19日~12月16日で京都国立近代美術館で開催するので、まだの方には強くお勧めしたい。