その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

スコット・ギャロウェイ 『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』 東洋経済新報社、2018

2019-03-24 07:30:00 | 

昨年夏に発刊されて以来、書評にも多く取り上げられた話題の一冊。どういう表彰かは知らないが、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019」でも総合第1位を獲得したとのことだ。

著者は複数の会社を起業・経営し、ニューヨーク大学のビジネススクールの教授でもある。本書はGAFAについてのアカデミックな経営戦略やマーケティングの分析というよりも、彼らの歩みや強み、共通の成功因子、GAFA以後の世界で我々が持つべき武器などについてが語られる。如何に私たちの生活や行動がGAFAに影響を受け、支配されているかを知るには最適の一冊である。読み物として良くできていて、読み始めるとページをめくる手が止まらない。

著者は、GAFAは人間の最も基本的な本能を利用して利益を稼いでいるという。アマゾンはより多くのものをできるだけ楽に集めようとする人間の狩猟採集本能に訴え、アップルは人間が神に近づいたと感じさせるとともに、異性の目に魅力的に映るような気にさせる。フェイスブックは人間にとって最も大切なもののひとつである人間関係を築き育む。そしてグーグルは知りたいことを検索で提示し、人間の知識欲を満たしてくれる。

彼らの破壊力・影響力は群を抜いている。アマゾンにより既存の小売店はどんどん消滅している。アップル製品を買うことでちょっと他とは違う自分を感じことができる。そして、フェイスブックで自分たちの嗜好は丸裸にされて、個別の嗜好に合わせた広告、ニュース記事に囲まれる。グーグルは、検索ワードで我々自身が意識しないことまで我々のことを知っている。

既に人間の生活に深く入り込んだGAFAは、私たちをこれからどこに連れて行くのか。本書を読んで薄ら寒さを感じるのは私だけではないだろう。あまりにも大きな力を持つこれらの企業には、競争政策や個人データ保護等の観点から何らかの「規制」が必要と思わざる得ない。

筆者は、GAFAの世界を前提としたこれからの時代は、超優秀な人間には最高だが、平凡な人間には最悪の時代になるという。10章では、そんな時代で成功するための処方箋が書かれている。ここで目指す「成功」は皆にとっての「成功」なのかどうかは疑問が残ったが、一つの指針として参考にはなる。

GAFAによって間違いなく便利になった世の中ではあるが、それが幸せな世の中と言えるのか。将来を考えると、大きな疑問が尽きない一冊だった。

 

 【目次】

1章 GAFA――世界をつくりかえた四騎士
2章 アマゾン――1兆ドルにもっとも近い巨人
3章 アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教
4章 フェイスブック――人類の1/4をつなげた怪物
5章 グーグル――全知全能で無慈悲な神
6章 四騎士は「ペテン師」から成り上がった
7章 脳・心・性器をターゲットにする
8章 四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
9章 NEXT GAFA――第五の騎士は誰なのか
10章 GAFA以後の世界を生き残るための「武器」
11章 少数の支配者と多数の農奴が生きる世界

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