その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

大澤真幸、橋爪大三郎 『不思議なキリスト教』 (講談社新書、2011)

2019-03-08 07:30:00 | 

 随分前に大学時代の親友から頂いた一冊。8割方読んだ状態で、ずーっと塩漬けにしてしまっていたので、改めて頭から読み返し通読しました。


 キリスト教についてとってもエキサイティングな対談が展開されてます。形としては大澤氏が橋爪氏に問いかける、橋爪氏が答えるという役割分担なのですが、問い手の大澤しも相当な話したがり屋さんと見え、実質、話している分量は2人ともほぼ同じぐらい。物知りと言う意味では相当にハイレベルなお二方が、互いに持論をぶちまける様は知的格闘技のようです。

 先日読んだ、この二人+宮台真司の鼎談『おどろきの中国』は、歴史を語ってもらうには面白いのですが、現代・未来の時事問題の書として読むにはそのリアリティに欲求不満が残りました。が、本書はテーマがテーマだけに、歴史的・社会的な分析中心のアプローチでより納得感があります。

 発せられる質問は、私のようなキリスト教信者ではないものが一般的に不思議に思うような質問(たとえば、「予言者とは何者か?」「奇跡は本当にあったのか?」「イエスは復活することを自分で知っていたか?」などなど)で、とっても興味をそそります。

 一方で、二人の前提を置いた仮定上のトークも多く、推理小説的な推理としては面白くても、情報としては「ほんとかな?」と思うところもありました。また、「イエスは神なのか、人なのか」など一般市民にとってはどうでもいいと言えば、どうでもいいようなことも、かなり熱くなって議論しているので、人によって好き嫌いが分かれるところもあるかもしれません。

 いずれにしても、キリスト教的価値観が西洋文明のベースをなして、社会が発展してきたことが良く理解でき、信仰としてのキリスト教でなく、知識・歴史としてのキリスト教を知りたい人にはお薦めです。

《目次》

第1部 一神教を理解する――起源としてのユダヤ教

第2部 イエス・キリストとは何か

第3部 いかに「西洋」をつくったか


 

コメント
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