コロナStay Home期間の積読解消読書の一冊。2016年の発売時にビジネス書のベストセラーにも上がっていたので、出張のお供に買ったのだが、昭和の体育会的営業スタイルの匂いについていけず、半分も行かないままに積読行きになってしまっていた。キリンビールの副社長まで務めた筆者が、高知支店長、四国、そして東海総括部長、更に本社営業本部長と営業畑を歩んで、アサヒビールに追い付け追い越せのビジ根(ビジネス根性)物語である。
ただ、落ち着いて読むと、昭和の体育会スタイルの営業という捉え方は違っていて、ビールというプロダクトでは差をつけにくい嗜好品営業における、必死のビジネスパーソンたちの工夫が描かれた本であることに気づく。どう営業社員を教育し、販売促進を行い、チームを導き、鼓舞するかという、リーダーシップ論であり、マーケティング論であり、企業文化論でもある。
営業のノウハウ本として系列的にまとめることもできると思うが(まさに第3章は「まとめ」として系統化したものである)、やはり実際のビビッドな生の体験、ストーリーの中で描かれる知見は、理論書で同じことが書かれていても迫力が違う。本の体裁から相当、細部は削ってあると思うので、こんなに「簡単に」うまくいくはずないだろうと思うところはあるが、本書の1ページ1ページの裏には書ききれない物語が存在していることや容易に想像できる。
「理念とビジョンに基づき、愚直に基本を繰り返す行動スタイル」「顧客視点に立った戦略と現場主義」と一般化して書いてしまうと何の面白みもないフレーズを、現実のセールスの現場でどこまで本気でやろうとするか。それをやり切れるか、できないかが、現実世界の分かれ目であり、それは理論書を何冊読んでも、できるようにはならないことに気づかされる。そして、日々のビビッドな面白さは、成功・失敗どちらにしても、必死で取り組む現場にあり、理論書や管理部門の中にはない。
(目次)
第一章 高知の闘いで「勝ち方」を学んだ
1995年 高知の夜は漆黒だった
1996年 負け続けの年
1997年 病人をゼロに
1998年 V字回復が始まった
2001年 ついにトップ奪回!
第二章 舞台が大きくなっても勝つための基本は変わらない
四国での闘い―違う市場でも基本を貫く
東海・中部での闘い―現場主義の徹底
全国での闘い、そして勝利
第三章 まとめ:勝つための「心の置き場」