その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

吉野次郎 『サイバーアンダーグランド ネットの闇に巣喰う人々』(2020、日経BP)

2020-08-17 07:30:00 | 

 ハッカーによる不正アクセス、アマゾンらへのフェイクレビュー、組織的な振込詐欺、ITアダルト産業、北朝鮮・ロシア・米国ら国家間でのサイバー謀略等、個人から国家に至る様々なレベルで行われるサイバー犯罪やその攻防を関係者からの取材によって明らかにする一冊。

 

 トピックが興味深く誘われたが、内容は期待レベルに達せず肩透かし感が満載だった。まず新しい情報が少ない。Web記事やマスコミで報道されていたような内容が多く、「そうだったのか!」と驚くような記述は殆ど見当たらなかった。

 

 また、内容的な深みも感じられないのも残念。週刊誌に掲載される事件レポートを集めたような編集で、構造的な分析があるわけでない。当事者への直撃インタービューが本書の売りのようだが、会話も想定内の内容でサプライズは無い。書籍ならではの深い情報と分析により、テーマについて理解が深まるという状況に遠かったのが歯がゆかった。

 

 テーマの性格上、内容的に書けるところと書けないところがある故かもしれないが、一読者としては残念な一冊となったと言わざる得ない。

 

<目次>
Prologue

第一部   欲望に突き動かされし人々 
chapter 1   未成年ハッカーと捜査官/攻防の全記録 
chapter 2   アマゾンの五つ星は嘘まみれ/中国の黒幕が手口大公開 
chapter 3   16歳が老人を食い物に/解明、詐欺のエコシステム 
chapter 4   ネットで女性とお色気話/200億円産業に育てた男の野望

 第二部   大義を背負いし人々 
chapter 5   金正恩のサイバー強盗団/脱北者が決死の爆弾証言 
chapter 6   恐喝、見殺し、爆殺……/英国人スパイの非情な戦争 
chapter 7   信じたいからだまされる/世論操るクレムリンの謀略 
chapter 8   超監視国家、IT乱用で出現/ウイグルから響く悲鳴

 証言集   警官とスパイからの警告 
 警官の証言   「本物のワルはあなたの隣にいる」 
スパイの証言   「この世界は汚れている」

Epilogue   生存の選択

コメント
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