その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

古代の奈良に思いを馳せる: 内田康夫『箸墓幻想』(角川文庫、2014)

2021-05-10 07:30:07 | 


緊急事態宣言でステイホームのゴールデンウィークになり、普段あまり読まない推理小説を読んでみた。内田康夫という作家の名はもちろん知っていたが、読むのは初めて。奈良の箸墓古墳や周辺の古墳を舞台にし、邪馬台国論争にも関連する殺人事件という題材に引かれて手にとった。

一気に読ませる推理小説である。特に中盤以降、加速度的にページをめくる手が早まる。フィクションではあるが、奈良の古墳の歴史的位置付けが触れられたり、折口信夫の『死者の書』から中将姫伝説などが引用されながら展開する物語は、謎解きだけでなく、日本の古代に思いを馳せる楽しさがある。

5月の連休に新緑の奈良を訪れたのは丁度2年前だ。一日も早く、奈良古墳巡りの旅に出掛けられる日が来て欲しいものだ。
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