今月もコロナ禍ならではの不幸中の幸いプログラム。N響首席奏者のソロ発表会の趣もあるユニークな企画です。実力のソロ奏者、献身的にコラボ・サポートするオケ、そして優しくまとめ上げる尾高シェフ、と三役が揃った充実の演奏会でした。
前半から幸せ一杯の音楽体験。ハイドンのチェロ協奏曲とモーツァルトの協奏交響曲は、いずれもソリストたちの優しい音色と美しいアンサンブルが至福で、柔らかなソファに体を100%委ねて脱力させている気分に浸ります。自分がとても緊急事態宣言下の東京に居るとは思えず、欧州の絶対王朝の貴族にでもなったような感覚で、異次元の世界に時空を移動していました。
後半は、ドビュッシーの舞曲で早川さんのハープの音にうっとりした後に、初めて聴いたパヌフニクの交響曲 第3番でこれまでの夢心地気分が一気に覚醒させられました。ステージの四角に陣取ったトランペットの目が醒めるような壮麗なファンファーレに始まって、スケール大きく、緊張感があり、ダイナミックで、密度の濃い音楽が続きます。N響の一糸乱れぬ演奏がお見事で、体が自然と前のめりになって聴く自分でした。
コロナ下の演奏会になってから聴衆席の雰囲気が大きく変わったことは以前の記事でも触れましたが、この日はいつもより更に暖かい拍手が長く続きました。LA席に陣取りましたが、この席は拍手の響きの違いや変化を団員のように楽しめる気がします。団員も聴衆も一つの大きなファミリーのような親しさと心からの称賛に満ちた拍手だったような気がしたのは私だけでしょうか。
NHK交響楽団 5⽉公演 サントリーホール
2021年5月16日(日)開場 1:00pm 開演 2:00pm
ハイドン/チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 作品101 Hob.VIIb-2
モーツァルト/4つの管楽器と管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K. 297b
ドビュッシー/神聖な舞曲と世俗的な舞曲
パヌフニク/交響曲 第3番「神聖な交響曲」
指揮:尾高忠明 指揮:尾高忠明
チェロ:辻󠄀本 玲(ハイドン/N響チェロ首席奏者)
オーボエ:吉村結実(モーツァルト/N響オーボエ首席奏者)
クラリネット:伊藤 圭(モーツァルト/N響クラリネット首席奏者)
ファゴット:水谷上総(モーツァルト/N響ファゴット首席奏者)
ホルン:福川伸陽(モーツァルト/N響ホルン首席奏者)
ハープ:早川りさこ(ドビュッシー/N響ハープ奏者)
トランペット(パヌフニク)
菊本和昭(N響トランペット首席奏者)
長谷川智之(N響トランペット首席奏者)
安藤友樹(N響トランペット奏者)
山本英司(N響トランペット奏者)
NHK Symphony Orchestra May Concerts at Suntory Hall
Sunday, May 16, 2021 2:00p.m. (doors open at 1:00p.m.)
Suntory Hall
Haydn / Cello Concerto No. 2 D Major Op. 101 Hob. VIIb-2
Mozart / Sinfonia Concertante for 4 Winds and Orchestra E-flat Major K. 297b
Debussy / Danse sacrée et danse profane
Panufnik / Symphony No. 3 "Sinfonia sacra"
Tadaaki Otaka, conductor
Rei Tsujimoto, cello (Haydn)
Yumi Yoshimura, oboe (Mozart)
Kei Ito, clarinet (Mozart)
Kazusa Mizutani, bassoon (Mozart)
Nobuaki Fukukawa, horn (Mozart)
Risako Hayakawa, harp (Debussy)
Trumpet Section of NHKSO (Panufnik)
Kazuaki Kikumoto
Tomoyuki Hasegawa
Tomoki Ando
Eiji Yamamoto